人間たまご

短編　人間たまご

プロット

１
小学校で先生が一人の少女を指名し
子供がどうできるのかを答えさせている。
彼女は男女の愛の結果にできると答えるが
先生から否定される。
隣にいた男の子が彼女のかわりに答える。

人間たまごという機械に
羊水と受精卵をいれて
温度を４０度に保って一年待てばできあがりです。

男の子はよくできましたといって
得意げな顔で座った。

２
放課後
女の子のお母さんが呼び出されている。
どうしてそんなことを教えるのですかと教師は母親を攻める。
しかし、母親はそれが本当であると反抗。
教師はあなたに母親としての素質があるのか疑わしいと言う。
娘は成績もよくなく、運動能力も人並みである。
そんなことを教えたら娘さんが大きくなった時に
同じ過ちをくりかえすと。
そして一言、家庭相談所に通告すると教師。

娘は教室の外にいる。

３
娘と母親は二人くらし。
娘は自分が人間たまごから生まれなかったのか
少し不満である。お腹は大きくなるし、一年は身動きとれなくなるし
大変だと聞いたからである。
母親はそれが儀式みたいなものだと答える。

４
娘は友達の家に行き
そこで人間卵を見せて貰えることになる。
そこに行くと卵のなかに人間がいて
母親の姿はない。お母さんは？と尋ねる娘。
母親は一人でハワイ旅行に行っているとのこと。
そして人間たまごの栄養剤の世話は残された彼女がしている。
新しい妹ができるのかと娘は思っていた
しかし、突然友達の表情が曇った。
どうやら彼女は自分の代わりにあの人間たまごの
人間が成り代わると思っているらしい。
彼女は成績もよく、運動神経も良いのであるが
母親の遺伝子が以前の好きだった男の人との間のもので
彼女を見るたびに嫌そうな顔をするのだそうである。
そして新しい彼氏との間に子供ができたら
結婚すると約束していたそうである。
そんなのおかしいよ！と娘は反発する。
人間たまごから生まれた子供はそういう運命であると友達は返す。
たまごから生まれた人間は人間じゃない
ただの都合のいいおもちゃなんだよ。

５
数日後、学校に行くと友達の姿がない。
そして同じ名前を名乗るまったく別人のような
女の子が現れたのだった。
娘にはショックが大きかったようで母親は当分彼女を
休ませることにする。なんと買い物に行った先で友人の母親と鉢合わせ。
そこで嫌味を言われる、今時自分の体の自由をなげうってまで
子供を作るなんて馬鹿げている。娘も出来が悪いみたいだし
いっそのこと人間たまごで新しい子供を育てれば？
なんてこと言うのよ、一度も母親になったこともないくせに！
あなただってそうじゃない！と返される母親。

６
娘は母親が言われていた一度も母親になったことがないという言葉
がひっかかっていた。もしかすると、自分も実は人間たまごから
生まれた人間なんじゃないかと心配になりはじめる。
母親は自分の写った写真を見て、私は間違っていないとなんども
つぶやいている。でももし娘が真実に気がついたらどうしようと
彼女は恐れていた。

７
数日後、娘は家の中でアルバムを見つける。
そこには自分が赤ん坊のころの写真がなかった。
ますます彼女の不安は増大する。
本当は失敗作なんでしょうと娘は母親に泣きつく。
そんなことはないとなだめる母親。
あなたも代わりはいないからだと母親。
そこへ、家相の職員がやってきて母親を連れて行ってしまう。
子供に就学への義務を怠ったとして。

８
施設に預けられた彼女は
数日後、母親と再会するが
そのままでいいと言っていた母親が
あなたを教育しなおしてあげると発言。
娘は本物の母親を出してほしいと要求。
しかしかなわず、彼女は反抗的に育ちついに高校を卒業すると
家を飛び出してしまった。
人間たまごから生まれた人間は人間じゃないという
恨みを彼女は持っている。

９
彼女は仕事をしながら母親を探す。
そしてある一件の空き地にたどりついた。
そこでは数十年前火事があって子供以外は亡くなったとのこと。
そしてかろうじて残った毛髪から母親のクローンを創りだした。

１０
クローンの病院で彼女は母親と再会。
彼女の姿を見た母親は鳴き出した。
突然、母親になれと言われた彼女であったが
もちろん子供を生んだことも育てたこともなかった。
それが娘には不思議だったのだ。
あなたがクローンの私に愛を教えてくれたから
私は母親になれた。
娘はクローンの引受け人になった。