ユウヤとキリン

オレはこれほどおもしろい夫婦（？）はないと思っている。キリンはいつでもユウヤが帰ってくるようにと4畳半の一間開けておくらしい。ユウヤはキリンのなすこと一つ一つが気にくわない。
　ユウヤは知っている、自分より稼ぎもアタマもいいことも、何一つどれをとってもキリンにかなわないことを。だから、余計にヒコウに走るのだ。キリンはそれをよく知っているから、容赦なくやる。
　アレは意地の張り合いだ。男と女って、そういうところが必ずある。女は男に根本的に適わないところがある。男になれないことだ。男根を持っていないことだ、つまり、いつも犯され役から抜け出せない。ユウヤはそこを最大限に利用している。
　ユウヤは他の女とやるのはキリンに対しての意趣返しだ。キリンもまたそれを、アテツケと知っている。だから、決して離婚しない。これもユウヤにたいしてアテツケだ。

　夫婦（？）で、ここまで意地を張るのはいない。男と女の人格とプライドがガチンコしている。あのふたりは、そんじょそこらの性格の強さでない。よってたかってマスコミはおもしろがって話題する。キリンは言っている、マスコミを通じてしかユウヤと向き合えない、と。マスコミがキリンとユウヤの音信手段なのだ。

　ユウヤに沢田のジュリーみたいに一つだけでもいいから、大ヒット曲があったら、こうなるどころか、ヤザワのエイちゃんを超えていたはずだ。

　ゲイノウの世界は100％才能だ。ユウヤにジョンレノンのほんの少しだけでもいいから、おこぼれほどのものがあったら、日本を代表するロックンロール野郎になっていた。性格は100％ロックンロールだが、性格だけではどうにもならない。チンケな間男になってしまった。

　残念だ。

　男って、女よりどこかに、なにかに、優れているんだ、という思い込みや錯誤がなければ、一緒にいられない、悲しい生き物もんなんだぜ。わかるかい？