- 名前
- シュリ
- 性別
- ♂
- 年齢
- 61歳
- 住所
- 福岡
- 自己紹介
- 特になし
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白い小型車
2008年11月18日 10:04
もうダメっぽいね。あんなに大きな車とぶつかっちゃったんだもんね、しょうがないね。
私はエアバッグが無いからあなたに大怪我させてしまうんじゃないかって心配だったけど大丈夫みたい。良かったわ。あなたと最初に会ったのは雨が降っていた日の夕方だったね。前のご主人様が新車を買ったので私は下取りに出されていたんだよね。
でも15年も前に作られたおばさんだし人気が無い車だったから誰にも見向きもされなかったんだ。取り柄と言えば車検が少し残っていたことくらいかな。
その車検が切れる頃には私の一生も終わるのね、なんて考えていたの。
そしたら、あなたと店の人が私をジーッと見て、あなたは言ったわね。「この車でいいです。」と言ったね。値段が安かったし学生になったばかりのあなたにとっては入門として、ちょうど良い車だと思ったんでしょうね。でも本当に嬉しかったわ。
あれから、あなたはとても私を大事に乗ってくれたね。
お金が無いから高いオイルも入れられないし、タイヤだって安いのしか買えなかった。けど、そんなことはどうでも良かったの。
車にとってご主人様と走っていることが一番嬉しいことなんだよ。いろんな所に遊びにも行ったね。私が行ったことの無い所へも連れていってくれたよね。お金が無くて高速道路には乗れなかったけど、あなたと二人で冒険しているみたいでとても楽しかった。私はおばあさんだから高速道路は得意じゃないしね。途中のコンビニで何回も休んで、少し寝たりしながら、やっと着いたよね。初めて走る都会の道路はとっても怖かったけど、あなたと一緒だったから安心だった。車検が切れれば私はもうおしまいかな、と思っていたけど、あなたは一生懸命アルバイトをしてもう一回車検を取ってくれたよね。私、正直覚悟してたんだ。だから、あなたが貯めたお金を私のために使ってくれると知った時は本当に嬉しかった。この子のために一生懸命走って、守ってあげようと決めたんだ。そろそろお別れみたいだね。
あなたは泣いているけど、私はちっとも悲しくないよ。あなたを守れて死ぬんだもん。今度は人気のある素敵な車を買いなさいね。
だってこの5年間、女の子を私に乗せたことなんて無いもんね。あなたも立派な社会人なんだから、いつまでも私なんかに乗っていないほうが良かったのかもしれないよ。でも、時々でいいから思い出してね。あなたのために一生懸命走っていた白い小型車がいたってことを。じゃあね、さようなら。
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