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意地っ張りな二人の結末

2008年09月01日 23:58

学年が替わると、M子とも違うクラスになってしまった。

M子の顔が見たくなっても、

わざわざ彼女クラスまで出向くのも

悔しいので、我慢した。

M子の方もきっと同じような気持ちだったのだろう。

M子の方からオレのクラスに来ることもなかった。

なので、夫婦喧嘩廊下なんかで

すれ違う時くらいに、

短い応酬をする程度になっていった。



「薫くん」と「由美ちゃん」宜しく

この何度目かの絶交期間に

われわれのこの微妙な関係を知らぬ

M子のクラスにやって来た転校生

大胆にもM子に付き合いたいと告白したらしい。



つっぱりくん達を除き、

男女関係における精神年齢の低いわが校において

それは事件だった。

すぐにオレの耳にも入ったし、

何よりM子がオレのそばを通った時に

「Y太郎くんから付き合って欲しいって

言われちゃった~。

どうしようかな~?」

なんて、嬉しそうにな顔をして報告する始末。

心穏やかではなかったが

つい「好きにすれば」なんて

心にもないことを口走ってしまう。



彼女親友のOさんが

「M子、断り切れなくて、

本当に困っているから、

仲直りして助けてあげて」

と言ってきてくれたが、

「そんなの本人の意思次第でしょ?」

というような受け答えをしてしまう。

「ホントにいいの?

どうなっても知らないよ?」

Oさんは二人のことを本気で心配してくれていた。

ホントにいいコだった。



こんな状態のオレとM子の関係を

もう一人、別な女のコが見ていた。



M子がY太郎と付き合うかどうか悩んでいたある日の昼休みに

オレはスケ番グループの女のコに囲まれ

C棟ウラに連れて行かれてしまう。

通称、C棟ウラという旧い木造校舎ウラのその場所は

大抵、喧嘩リンチする場所として選ばれる。

喧嘩にはそれなりに自信があったオレだが

女のコ相手だし、

とは言え、スケ番グループだし、

ある意味、ビビっていると、

リーダー格のO平が

「ハシのことどう思う?」

と訊いてくる。

オレは同じクラスになった橋本のことを思い出していた。

橋本は顔が小さく豹のような精悍な顔をしていて

運動神経バツグン!、それでいて頭もよく

コンプレックスなんて何もないだろうな

という、オレから見ても格好良い存在だった。

カッコいいし、いいんじゃない」

「じゃあ、想ってる?」



この想うという表現が、当時の横浜だけの

あるいはウチの中学だけのローカルな表現かもしれないので、

ちょっと注釈を入れると

両想いや片想いの意味での想い、

つまり相手を好きという意味で使われている。



「想う!?」

オレは意味がわからなかった。

「いいヤツだとは想うけど、

そういう趣味がないし・・・」

「そういう趣味って何だよッ!」

と色白美少女のA崎にケリを入れられてしまう。

「だって、オレ男だし、男に興味なんか・・」

と言った瞬間、

「ハシが男だって言うのかよッ!」

と今度は完全に本気で脇腹にケリを食らわせられる。

「ちょっと、待った!」

オレは堪らなくなり、

「ハシって橋本のことじゃないのか? 誰のことだよ?」

向こうもお互いの勘違いに気付いたらしいが

「ハシって言ったら、E子のことに決まっているだろッ!」

と言い返してくる。

「お前、M子とは別れたんだろ?」

「別に別れるも何も付き合ってなんかいないから・・・」

なんて、ついここでも見栄を張ってしまう。

「じゃあ、ハシと付き合ってもいいんだな?」

なんで、そうなるのか理解できないが、

結局、無理やり付き合わせられるハメになってしまった。



E子は色白小柄なコで様々なことに対して

批判的なものの見方をするコで

権力的なものが嫌いなコであった。

きっと教師に対して面と向かって猛烈に抗議するオレに対して

似たような面を見出したのかもしれない。

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