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- プロフィール見てくれて、ありがとう。 セカンドパートナーを探してます。 好奇心も性欲...
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肉の檻④ ― 鎖の完成
2026年04月04日 02:20
第4回:鎖の完成
― 変わらないことの完成 ―
三週間。
凛(26)は、朝の光の中で爪を眺めていた。
仕事、食事、相槌。
鏡に映る瞳に、もはや自分を探すことはない。
そこにあるのは、冴子の視線が焼き付けた空白だけだった。
1. 空白
日常が過ぎていく。
焦燥も、不安も、遠い。
冴子がいない時間は、ただの待機だった。
いつから選ぶのをやめたのか、その境界線すら思い出せない。
2.再起動
金曜、23時14分。
スマートフォンが、一度震えた。
名前のない番号。一言。
『来なさい』
心臓は跳ねない。
止まっていた時計の針が、一目盛り動いた。
最初から、何も途切れていなかった。
3. 無抵抗
凛は、迷わない。
準備に時間もかけない。
冴子が好む色を選び、身を整える。
「行くか、行かないか」という分岐は、すでに脳内から消去されていた。
身体は、あのサンダルウッドの香りを記憶している。
4. 反復
三十分後。
凛は、冴子(42)の足元に、あの角度で跪いていた。
サンダルウッド。
真紅のガウン。
膝の上の洋書。
冴子が、本から目を離さずに足を差し出す。
凛は、その足を自分の腿に乗せ、包み込む。
儀式ではなく、生存のための呼吸。
感情はない。
冴子が髪を引けば、身体は跳ね、熱を帯びる。
設計図通りに動く、機械の連鎖だった。
5. 結び
「……ふぅ」
冴子が、本を閉じる。
凛は、床に崩れたまま、視線が外れるのを待つ。
冴子は抱きしめない。別れも告げない。
ただ、モノを扱い終えた者の、平坦な沈黙がある。
「帰っていいわよ。明日は早かったでしょう」
言葉、トーン、空気。
昨日と同じ。
明日もまた、同じ。
凛は、震える手でボタンを留め、
立ち上がった。
バッグをかけ、扉を開ける。
背後で、鍵の閉まる音がした。
夜の街路。
風が吹く。
凛は、駅のホームで、わずかに立ち尽くした。
時計の針は、0時を回っている。
自由という言葉の意味を、もう思い出せない。
不自由を感じることもなかった。
出口は閉ざされたのではない。
「出口」という概念そのものが、消滅した。
凛は、少しも困っていない顔で、
ただ、次の「金曜」を待つための、空白の中へと歩き出した。




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