- 名前
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- 東京
- 自己紹介
- プロフィール見てくれて、ありがとう。 セカンドパートナーを探してます。 好奇心も性欲...
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肉の檻 ③ ― 感覚の簒奪
2026年04月03日 01:26
第3回:感覚の簒奪
― 剥落する日常、残された反射 ―
火曜、14時。
デスクの電話が鳴っている。
凛(26)は、受話器を見つめたまま動かない。
三回、四回。コール音が鼓膜を叩き、ようやく指が伸びる。
「……はい、失礼いたしました」
声が、自分のものとは思えないほど遠い。
何を話すべきか、どの敬語を選ぶべきか。
脳内の歯車が、油の切れた機械のように軋む。
冴子のいない場所では、呼吸一つにすら「正解」が見つからない。
1. 再訪(もはや選択ではない)
夜、21時。
凛は、冴子(42)の部屋の前に立っていた。
インターホンは押さない。
数分後、内側から鍵の開く音がした。
冴子は姿を見せず、ただ扉だけが数センチ、隙間を作った。
凛は、吸い込まれるように中へ入る。
サンダルウッドの香りが鼻腔を突いた瞬間、全身の筋肉が、泥のように弛緩した。
2. ズレの顕在化
冴子はソファで新聞を広げている。
凛は、指示を待たない。
膝をつき、冴子のパンプスを指先でなぞり、ゆっくりと脱がせる。
その足を自分の太腿の上に乗せ、両手で包み込む。
「……そんなこと、言ったかしら」
冴子は新聞から目を離さない。
凛は答えない。
ただ、冴子の足の甲に、自分の頬を強く押し当てた。
以前は「喜ばせたい」という意図があった。
今は違う。
こうしていなければ、自分の輪郭が霧散してしまう。それだけだった。
3. 身体の暴走
冴子が、膝に乗った足を僅かに動かし、凛の喉元を圧迫した。
ただの重み。
ただの圧力。
それだけで、凛の喉から、掠れた吐息が漏れる。
「……ぁ」
冴子が、凛の髪を指先で一房、強く引いた。
凛の身体が、電流を流されたように跳ねる。
触れられているのは髪と、喉。
なのに、
凛の下腹部は、暴力的なまでの愛撫を受けたかのように勝手に脈打ち、熱を帯びていく。
それは、脳が快楽を感じるよりも早く、
肉体が冴子の刺激を「正解」として処理する。
4.自我の断絶
「凛」
呼ばれた。
凛は、冴子の瞳を見つめる。
けれど、その視線の意味を理解できない。
冴子の黒目の奥に、吸い込まれていく。
視界が、ゆっくりと沈んでいく。
「……」
口は開くが、言葉にならない。
冴子が何を求めているのか、
自分が何をしたいのか。
その境界線は、すでに消失していた。
凛は、ただ冴子の視線に晒され続けることで、
自分が「モノ」として存在していることを、かろうじて確認していた。
5. 何も起きない(結び)
「……ふぅ」
冴子が新聞を畳む。
凛は、床に崩れたまま、動けない。
冴子の視線が外れた瞬間、
糸の切れた人形のように、重力に負ける。
「帰っていいわよ。明日は早かったでしょう」
いつも通りの、平坦な通告。
冴子は立ち上がり、寝室へと消えていく。
凛を振り返ることも、
その崩れた身体を労わることもしない。
凛は、震える手でボタンを留め、
立ち上がった。
部屋を出る。
夜風が頬を打つが、冷たいとは思わない。
電車の窓に映る自分の顔は、
三週間前と何も変わっていないように見える。
けれど、凛は知っている。
駅のホームで、誰かに名前を呼ばれても、
自分はもう、即座に振り向くことができない。
凛は、次の「金曜」まで、
自分がどうやって時間をやり過ごせばいいのか、
ホームで、凛はわずかに立ち尽くした。




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