主従関係

世の中には、昔から、主従という関係をむすぶカップルが存在します。一般的にはSの男性とMの女性のカップルですが、男女が逆になっている場合もあります。

SとMのカップルと言えば、すぐに肉体的な関係をイメージしますが、主従関係は、それを当然含みながらも、それに尽きるものではなく、どちらかといえば精神的な繋がりです。つまり、主となる者が、従者となる者を所有している関係ですが、所有とは、それがお互いの合意と信頼で成り立っている以上、こころとこころの結びつきから生まれるものです。

封建時代や奴隷制が存在した時代ならいざしらず、現代では男女が平等であることは大前提ですから、主従関係は反時代的ですし、公に認められる関係ではありません。あくまでそのカップルのあいだだけで成立している関係です。

しかし、こころとこころの結びつきと言ってみても、所詮、人間は他人のこころを理解するのは不可能ですから、他人のこころを支配することはもともと不可能ではないかという問題があります。というよりも、許されないことであると言うべきです。

ですので、主従関係には、支配したい/されたいというリアルな欲望の側面と、許されない部分を演技でカバーする側面が入り混じることになります。

能について世阿弥が「虚実の皮膜」と言っていますが、主従関係にもあてはまります。

そのことを理解した上でも、なお主従の関係に憧れる男女が存在するのです。