- 名前
- ポメリー
- 性別
- ♀
- 年齢
- 52歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ウラログでは、お酒のようにくらくらと心酔わせるお話を綴れたらいいなと思っています。 ...
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『メロディ』
2012年03月19日 00:01
私よりも細く艶やかな長い髪。
指先をそっと入れて、軽やかに解いてみる。
滑らかなその感触に、嫉妬にも似た感情がふわりと湧いてくる。
彼に出逢ったきっかけなんて、忘れた。
彼は音楽を仕事とし、時折モニタの向こう側にいる人だった。
まだ肌を重ねる前、お誕生日のプレゼントに1枚のMDを貰った。
彼が今手掛けている、ほんの数十秒の日替りのCM曲と、私へのオリジナル曲が入っているMD。
「君を想って創ったんだ。」
眼鏡の奥で目を細めて笑う彼。
曲のタイトルは、その時私が可愛がっていた猫の名前だった。
そうだ…私達は猫が好きだという話で、始まったんだ。
ごく単純なきっかけで始まった関係。
彼には、妻があり彼女がいた。
私にも定期的に会う人がいた。
だから、肌は重ねなかった。
それは、罪悪感、というのではなく、まだその時ではなかったから。
そしてその時を迎えたのは、世界にたったひとつの贈り物を貰ったから、ではなく。
お互いに、どんな風に抱いて、どんな風に抱かれるのかを知りたかったから。
そう、まるでスポーツのお相手を頼むような。
何の悪びれた様子もなく、私達はその日を迎えた。
当たり前のように。
もう一度、髪に伸ばしかけた手を、彼のスラリとした指先が捉える。
私の小さな手に絡まるしなやかな指は、私のコンプレックスを刺激する。
眼鏡を外した彼の顔は別人の様で、口数の少なさが普段と違う彼をみせて、少し心細くなってしまう。
「…後悔、してるの?」
彼が、捉えた私の指をひとつひとつ口に含みながら尋ねる。
ううん…そんなこと。
応えようとしても、声にならない。
呼吸が、少しずつ乱れていく。
仕方がなく、彼の目を見て僅かに首を横に振る私。
それを確かめるかのように、彼が含み舐めあげる。
「……ん……。」
漏れる吐息を辿るように、舌先がチロチロと手のひら、そして手首へと運ばれてゆく。
「んん……っ……。」
ゾクゾクする感覚が、腕から腋、そして腰へと落ちていく。
私が疼き始める。
「随分、可愛がって貰っているんだね。」
二の腕の内側、柔らかいそこに、彼が歯を立てた。
「あぁっ………。」
甘い声が私から込み上げる。
彼の舌が、腋から脇腹にかけて丹念に私を愛撫する。
やがてその舌は、私の花芽と辿り着き、そして蜜を紡ぐだろう。
「はぁぅっ……あっ……ああっ…。」
私から、彼が啼き声を導き出す。
それはまるで、五線紙にメロディを置くみたいに。
固く瞑った目蓋の裏に、鍵盤を踊るしなやかな彼の指が見えた気がした。
そうしていつか、私も彼の作品の欠片のひとつになってしまうの。
彼が触れた私は、もう私であって私のものではない。
だって、今この瞬間から、彼の中で新しい作品が息衝いていて、それを何事もなかったかのような顔で生み出すのだから。
だから、せめて。
私は左肘で上半身を軽く起こして、彼を見つめる。
静かに彼と目があう。
私は彼に微笑んで。
「はやく……ここに、きて。」
湿り気を帯びた、私よりも長い髪を掻き分けて、首筋に手を絡めて、キスをねだる。
「ねぇ、奥まで……。」
一瞬、息を詰めて、そして彼を深く呑み込む。
こうしてあなたが創り出すものに、私が触れる度にきっと甘い痛みと嫉妬を感じるのだろう。
幾つもの女性達の欠片の中から、私を探すことをしてしまいそうだから。
だから、せめて。
私は更に固く目蓋を閉じた。
私のためだけに、生まれた曲をただ思い浮かべながら、堕ちるような快楽に漂った。
このウラログへのコメント
メロディや詩の中に刻まれるように溶け込む、溶かしてしまうそんな情景が浮かびます、相手の曲を作るように
二人の間に多くの言葉は要りません…水面に手を入れるだけで波の輪が広がります。共鳴して大きく膨らみます
女性のカラダは正に楽器かも…
手入れを怠らず
優しく奏でると
良く響きます うひゃ♪
> LEONLEONさん
きっとその溶け込んだ中には、互いに別の欠片が混じっているのですよ。
不純物があるからこそ、煌めくのかもしれませんね。
> 翔パパさん
水面に手を入れるだけで…って、いい表現ですね。
堪えきれずに掻き回すと、波の美しい輪は乱れてしまうから、何事も加減が必要かも。
> オフタイムさん
ありがとうございます♪
昔、書いたお話です。
> トマトケチャップさん
そうそう。
柔らかい、穏やかな旋律だったのですよ。きっとその曲。
> ボブさん
うひゃ♪ って(笑)
放ったらかしは、ダメなんですよね。
楽器も。
時には激しい波を立てても?女心の特権です。嵐のような時が過ぎ穏やかさがもどります。至福を感じる時です
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