- 名前
- ポメリー
- 性別
- ♀
- 年齢
- 52歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- ウラログでは、お酒のようにくらくらと心酔わせるお話を綴れたらいいなと思っています。 ...
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『カウンターの下』
2012年03月16日 00:16
静かなジャズが流れる店内。
一枚板の長いカウンターの隣では、髪の長い女性と小柄な男性が微妙な距離で座っていた。
「わぁ、ありがとう。」
嬉しそうな声で男性が小さな包みを受け取っている。
一足早いプレゼントですと、その女性は微笑んでいた。
良かったら使ってくださいと、差し出していたのはどうやらアロマキャンドルのようだった。
他人のことが気になるなんて珍しいわと、自分に驚きながら左耳だけが聞き耳を立てている。
「それじゃ、気をつけてね。」
さりげなくその女性をエスコートしながらドアまで見送りに出た男性が、しばらくして戻ってきた。
”一緒に帰ったわけじゃないんだ”
飲み干したロンググラスの中で、氷がカタリと音を立てた。
「あの、お隣、よろしいですか?」
さっきの男性がすぐ傍に立っている。
「え…?」
状況が掴めずにいる私に、彼は人懐こい笑顔を向ける。
「僕に、1杯ご馳走させてください。」
気がついた時には、彼は私の左に腰を下ろしていた。
目の前に差し出されたグラスを空けるまでは、どちらにしても帰れない。
面識のない人と話をするような気分じゃなかったが、感じの良い彼の話し方につい押し切られるような感じになってしまっていた。
「最近よく、来ていますよね。いつも見ていたんですよ。」
そう言って彼が私の顔を覗き込む。
こういうことを平気で言えるんだ…そのことがかえって新鮮で、ただ黙って私は彼の話を聞いていた。
接客業であることがすぐわかる腰の低さに、話題の豊富さ、勧め上手が加わって、気がついたら随分グラスを空けていた。
背の高い椅子の上で、身体がふわふわする感覚が襲ってきた。
さっきよりも、ずっと彼は近い場所に座っていた。
左腕に彼の体温を感じるくらいに。
この人は、何者だろう。
さっきの女性は、この人にとってどういう存在だったのだろうか。
知りたいようで、そんなことはどうでもいいようで、ああ、酔いがまわっているのだなと感じた。
ちょっとの間黙った後、急に彼が他愛もない話をしはじめる。
………………?
何が触れているの?
ほんの一瞬、太ももの辺りに何かが触った気がした。
顔は下げずにちらりと目の端だけで、自分のスカートの辺りを確認する。
脚を少し広げて、洗いざらしたジーンズの上に乗せている彼の右手が見えた。
…………………!!
身体に見合った小ぶりのその手が、小指だけを動かして私の太ももに触れている。
思わず、身体を少しだけずらしてその指を避けた。
彼は、何事もなかったかのように店の人と雑談をしている。
”気のせいだったのかも”
私は気を落ち着かせて、グラスを口元に運ぶ。
そして、雑談にさりげなく相槌を打って参加しようとした。
”そうだ、気のせいだったんだ”
でも。
気のせいなんかじゃなかった。
黒いタイトスカートのお陰でぱっつりとした太ももの側面をつーっと撫で上げられて、ようやく気付いた。
誘ってる。
思わず吐息が漏れそうになった。
胸がドキドキして彼の方を見れない。
どうする。
今度はスカートから零れた膝をふわりと撫でられた。
あ……っ。
スカートの奥が微かに疼いてしまう。
”ダメ、いけない。”
廻り始める酔いの中で、必死に踏ん張る理性が私の左手を動かす。
悪戯をする彼の手を払おうとした時、がしりとその手に捕らえられてしまった。
そうして、その手が私の手のひらを、指の間を、まさぐり始める。
この手に触れられたら、私はどんな声で啼いてしまうのだろう。
イケナイ想像が私を締め上げてゆく。
息が乱れそうな恐怖を堪えて、手を振り払わなくてはと自分に言い聞かせる。
なのに、私は彼と指を絡め一つになる。
カウンターの下の薄暗がりで、音も立てずに私の手は犯された。
他愛もない話を続けながら。
きっと、この男に抱かれる。
そんな予感に私は濡れてゆく。
思いもかけないことに足を捕られるのは、こんなにも簡単なことだった。
このウラログへのコメント
確かにエロチックだ
次回も期待しますね♪
いいですね。こういうシーンがあったのでしょうか?
リアルな微細な表現に息を飲むそんな情景が浮かびます。中々慣れた手つきとまわい経験がものを言うよ
指と指の触れ合いが新しい世界へ続く…コンピュータでは測り知れない人の繋がりです。
良いものですね?
はじめまして。
その先の成り行きがが気になりますね。
不器用な私には真似もできませんが・・・
バーのカウンターは、それだけで絵になりますよね。
酔いのせいにしてしまうのも時としていいのかもしれません。
皆様、素敵なコメントありがとうございます。
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