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『KISS NOTE』 ~1stターゲット(REV.2)~

2009年04月28日 00:05

“あの子の名前書けぇちゅぅねん。
 そ、したら、あの子とKISSできまんねん。
 えぇやろぉ、あんな若い子とKISSできんねんで。
 こんなえぇことなぃゃろぉ。”
小っちゃいおっさん、いや、自称堕天使の留使腐ヱ留は誘う。。。

おっさんと言っても、光も四十過ぎのおっさんなので、
光が見積もった感じでは、自分よりは少し年上風の顔立ち。
色つやは良いが、多少自分より顔に年輪があり、服装刑事コロンボのような
くたびれた、ヨレヨレ、ダボダボトレンチコートを着ている。
ズボンも靴も、サイズが合っているか分からない位のアンバランスさ。

“何、わしに見とれとんねんっ!!
 あんさん、そっちの方なんかいねん!?”

んっ!?

『そう言えばっ!!羽がないっ!!しっぽがないっ!!
 堕天使って言うわりに、人間の小っちゃいやつなだけっ!!』

留使腐ヱ留の話しを聞かない光。。。

あんさん、わてのこと、疑ごうてるんとちゃうんかぁ?
 堕天使やぁ、ゅうたら、羽があって、槍のしっぽが生えとるとか
 思ぉとんのやろぉ…。”

ドキッ!?
一瞬焦ったと同時に、留使腐ヱ留の言葉を本気にし始める光。
光は結構単純…。

“どうせ、小っちゃい、おっさんとか思ぉとんのやろぉ…?”

えっ!?
更に留使腐ヱ留の信用を深める光。

“名前書けって言われても…。名前知らないですし、
 いきなり、お店の中でKISSしたりしたら、痴漢行為で、
 捕まりますよっ!!”

“アホやなぁ、そんなこと考えてたら、このKISS NOTEの意味
 なぃやろぉっ!!”

説得力が深まる留使腐ヱ留の言葉、それに呼応するように、
理解を深めるためか、今の状況から抜け出したいのか、
光は、大ジョッキのビールをゴクゴクと飲み干す。
留使腐ヱ留との会話のせいか、遅かったアルコール量の進捗が、
だんだんと加速していく。

“そやっ、どんどん飲んで、わての話しに酔いしれて、
 気に入った子とKISSしてみぃやぁ!!”

と呼び鈴を留使腐ヱ留は何の迷いもなく押して、店員さんを…。

“まだまだ、飲めるんゃろっ!!どんどん頼みぃっ!!”

確かに光はまだまだ飲める。いつも、大ジョッキ3杯に中ジョッキ1杯、
を飲んで、気持ちよくなって、帰宅する。
それが普段の生活のリズムになっている。

留使腐ヱ留の言葉に誘われたのか、無意識なのか、
“お待たせしましたぁ!”
という店員さんに、
“大生でぇ。”
条件反射的に光は応えてしまう。

“大生でぇす~。”
と男の若い店員さん。。。
“こんばんわっ!!”
と、「いつもどぉもっ」という感じで挨拶を交わし、
光は手に取った大ジョッキを二口ほど、飲み干した。

『そぅだぁ!!』

光はあることをひらめいた。
以前、ここにいたチーフ的な女性の店員さんが、
地元に帰るってことで、1ヶ月ほど前にやめたことを思い出した。

もし、このKISS NOTEが嘘なら、
となりにいるおっさんが単なる妄想なら、
今日、その子には会えないし、そこから先へは何も進まない。
それで、この奇妙出会いも、このKISS NOTEとも別れられると、
光は思った。

でも、その子の名前は知らない。。。
どうすれば、その子の名前を聞き出せるか、光は少し考えた。

『あの男の若い店員さんになら、聞ける。
 ネタとしても、名前を聞き出せなくても、話しの展開は
 色々持って行けるっ!』

“なんか、ひらめいたみたぃやけど、実行に移さんと、
 その先ぃ、何にもならへんでぇ…。”

留使腐ヱ留の言葉が聞こえたか、聞こえなかったか、
光は、呼び鈴を押し、店員さんを…。
あの若い男の店員さんが来なければ、光の考えた策略は、
おしまい…。
何故か、光は思い立って、一瞬の間に実行してしまった。
正直、何を頼むかは、店員さんが来てから、考えようと、
場当たり的になっていた。


“お待たせしましたぁ…。”


『来たぁっ!!』
期待通りの若い男性の店員さん。

メニューを手にして、目で追っているが、全然文字が
目に入っていない…。
タバコをくゆらしながら、考えている振りをして、
光の気持ちはどうやって、やめたあの子の名前を
聞き出すか、聞き出すのを切り出すかを考えていた。
一品頼んでから、切り出すか、頼む前に切り出すか…。』

重大な事、重大な決意をこの一瞬でしてしまう光。

“じゃあ、茶豆でっ。”


一瞬の沈黙の後、

“そぉ言えばさぁ、この前やめた女の子
 どこに帰ったんだっけ?”
何かに引き込まれるように言葉が出てしまう。
この一瞬の間に考えた訳でも、事前に切り出す言葉を考えていた訳でも
言葉を選ぶ時間もなく、吐き捨てるように出てしまった言葉。

“えっ!?誰でしたっけ?”
ドキドキしながら、聞いたのに回答はそっけなく…。

“あの背の小さくて、結構胸の大きな女性、いたじゃん、
 リーダっぽい人。割と化粧が濃い感じの人ぉ…。
 今、どうしてるんだろぉね?”
光は夢中に特徴を説明して、答えを催促するように、
悟られないように、慎重に質問をして。

あぁ!!ナオ姉(ねぇ)っすね。
 小原直子さんっすよねっ!?”


『おっ!!聞けたっ!!しかもっ、フルネームで…。』

その後の店員さんの会話は耳に入らず…。
茨城に帰って、今は何やってるんすかねぇ…。
 今日、会ったんすけど……。”

フルネームを聞いた瞬間にKISS NOTEに目を落とす光。

“ほなぁ、その名前書いてみよぉかぁ…。
 名前書くなら、いつ、どこで、どんな風にKISSするか、
 克明に書かんと、あかんでぇ…。”

留使腐ヱ留の言葉を半信半疑で聞きながら、

小原直子さんと、xx月yy日に、居酒屋てやんでぇで
 キスをする…。】

光は、ここにいるはずのない女性と今日、
しかも、ここでキス出来るはずがないと思って、
正直、KISS NOTEを信用しないで、勢いよく書き上げた。

ちょっとだけ、光は勝ち誇ったように、留使腐ヱ留の顔を見ながら、
薄ら笑いを浮かべた。

『これで実現しなければ、この小っちゃいおっさん含めて、
 単なる気持ちの妄想、ゆらぎが起こっただけ…。』
『ちょっとおもしろかったけど、いつものようにアルコール
 楽しんで、寄った勢いで家に帰り、眠るだけ…。』

と光は自己解決をしていた。
大半は留使腐ヱ留との出会いを切り捨てるように、
あとほんのわずかは留使腐ヱ留を信用するような気持ちで。

KISS NOTEを書き込んで、
ビールを、二口、三口、四口…。

急にさっきの若い男の店員さんが、

“ナオ姉が、挨拶したいって!!”

!?
!?

このウラログへのコメント

  • こう 2009年05月01日 14:06

    > 仁美さん
    カキコありがとうございます。

    頑張りますっ!!
    なかなか、次のストーリーが、
    なかなか書けなくて…(爆)。

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