- 名前
- hiro
- 性別
- ♂
- 年齢
- 52歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 溢れる知性(ぉい
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本当は怖い童話 その2(後編)
2008年03月19日 00:26
文字数制限の関係で前編・後編に渡ってしまったことを
お許しください。
それでは続きをどうぞ
父さんはしぶしぶ子ども達を置き去りにしていたので、
子ども達の姿をもう一度目にすると、心から喜びました。
母さんも嬉しそうにしていましたが、心の中では怒っていました。
それから間もなく、また家にパンがなくなってしまいました。
そしてヘンゼルとグレーテルは、夜、母さんが父さんに
話しているのを耳にしました。
「一度は子ども達が帰る道を見つけて、私もそれでいいことに
したけど、また家にはパンのかたまりが半分しか残っていない。
明日ふたりが家に戻ってこれないように、森のもっと奥深くまで
連れて行っておくれ。
そうでもしなけりゃ、私たちはもうどうにもならないよ」
きこりは心が重くなりました。
”パンの最後の一口まで子ども達と分け合うほうがよほどましだ”
と思いました。
けれども、一度あんなことをやってしまっているので、
いやだ、とは言えませんでした。
ヘンゼルとグレーテルは、両親の話を聞いてしまいました。
ヘンゼルは起き上がって、また小石を拾いに行こうと思いました。
ところが戸のところまでやってくると、母さんが鍵をかけて
しまっていました。
けれどもヘンゼルはグレーテルをなぐさめて言いました。
「いいから、お休み。グレーテル。神様がきっと僕たちを
助けてくれるよ」
朝早く、ふたりは一切れずつパンをもらいました。
それはこの間よりもずっと小さなものでした。
途中でヘンゼルはパンをポケットの中で細かくくだいて、
何度も立ち止まって、くだいたパンを地面に落としました。
「なんでそんなにしょっちゅう立ち止まってきょろきょろして
いるんだい、ヘンゼル。さっさと歩くんだ」
と、父さんが言いました。
「だって、僕の鳩を見ているんだよ。屋根の上に止まって、
僕にさようならをしているんだ」
すると、母さんが言いました。
「ばかだね。あれはおまえの鳩なんかじゃないよ。
朝日が煙突に照り付いているのさ」
けれどもヘンゼルは自分のパンを残らず細かくくだいて、
そのかけらを道に落としていきました。
母さんは森のずっと奥までふたりを連れて行きました。
そこはふたりが生まれてから一度も来たことのない場所でした。
そこでまた、大きなたき火のそばで寝ているように、
夜になったら、父さんと母さんが迎えに来るから、と
言われました。
昼にグレーテルはパンをヘンゼルに分けてやりました。
ヘンゼルは自分のパンをみんな道にまいてしまったからです。
昼が過ぎ、夜も過ぎましたが、かわいそうな子ども達の
ところへは誰も来ませんでした。
ヘンゼルはグレーテルをなぐさめて言いました。
「待ってろよ。月が昇ったら僕がまいたパンくずが見えるから。
それで家に帰る道が分るよ」
月が昇り、ヘンゼルはパンくずを探しましたが、なくなって
いました。
森の何千もの鳥たちが見つけて、みんなついばんで
しまったのです。
ヘンゼルは、それでも家に帰る道を見つけようと、
グレーテルを連れて歩きましたが、まもなくふたりは大きな森の
中で道が分らなくなってしまいました。
ふたりは夜どうし歩き、それから次の日も、一日中歩きました。
そして疲れて眠り込んでしまいました。
それからまた一日中歩きましたが、森から出ることは
できませんでした。
ふたりはお腹がぺこぺこでした。
というのも、食べるものといったら地面に生えている
小さな野イチゴがふたつ、みっつしかなかったからです。
3日目に、ふたりはまた昼近くまで歩いていくと、小さな家へ
出ました。
その家は、まるごとパンで出来ていて、ケーキで屋根が葦かれて
いました。
窓は白い砂糖で作られていました。
「さあ、ここで腰を下ろして、お腹いっぱい食べよう」
ヘンゼルが言いました。
「僕は屋根から食べるよ、グレーテル、おまえは窓から食べろよ。
とっても甘いぞ」
ヘンゼルは、もう屋根を随分食べてしまっていました。
グレーテルも、丸い窓ガラスを2,3枚食べてしまって、
もう一枚もぎ取ったちょうどその時、家の中から優しい声が
聞こえてきました。
「かじるぞ、かじるぞ、ぼりぼりかじるわたしの家をかじるのは
だれ?」
ヘンゼルとグレーテルはとても驚いて、手に持っていたものを
落としてしまいました。
そしてすぐに、小さく年を取ったおばあさんが、
戸口からはうように出てくるのが見えました。
おばあさんは頭をぐらぐらさせながら言いました。
「おや、可愛い子ども達、どこから来たかい?私と一緒に中へ
入っておいで。楽しませてあげようね」
そしてふたりの手を取って、家の中へ連れていきました。
そこには美味しそうな食事が用意されていました。
砂糖のかかったパンケーキや、りんごや胡桃もありました。
それからふたつのすてきな小さなベッドが用意され、
ヘンゼルとグレーテルはその中へもぐり込み、まるで天国に
いるような気がしました。
ところがこのお婆さんは悪い魔女でした。
子ども達を待ち伏せして、おびき寄せるために、パンの家を
建てていたのです。
魔女は子どもをつかまえると、殺して料理し、食べていました。
そういう日は魔女にはお祭りの日でした。
それで、ヘンゼルとグレーテルが自分のところへやってきたとき、
魔女はとても喜びました。
朝早く、ふたりが目を覚ますよりも前に、魔女はもう起きていて、
ふたりのベッドのわきへやってきました。
そしてふたりの子ども達がかわいい顔で寝ているのを見ると、
魔女は喜んで、これはおいしいごちそうになるだろう、
と思いました。
魔女はヘンゼルをつかむと、小さな家畜小屋へ押し込みました。
ヘンゼルが目を覚ますと、格子に囲まれていて、
まるで閉じ込められた若いめんどりのようでした。
そして、ほんの2、3歩しか歩くことができませんでした。
一方、おばあさんはグレーテルを揺さぶると、大きな声で
言いました。
「起きるんだ、このぐうたら娘!水を汲んだら、台所へ行って、
おいしいものを作るんだ。おまえの兄さんはあの家畜小屋に
いるよ。まずはあの子を太らせて、太ったら喰ってやるのさ。
さあ、おまえは兄さんにえさをやるんだ」
グレーテルは驚いて泣き出しましたが、
魔女の言うとおりにしなければなりませんでした。
そこで、ヘンゼルは太るようにと、毎日とびきり上等の食事が
作られましたが、
グレーテルはザリガニの殻しかもらえませんでした。
おばあさんは毎日やってきては、
「ヘンゼル、指を出してみな。おまえがそろそろ丸々と太ったか、
触ってみるから」
と言いました。けれども、ヘンゼルはいつでも小さな骨を
差し出したので、おばあさんはヘンゼルが少しも太らないのを
不思議に思いました。
4週間たったある晩、魔女がグレーテルに言いました。
「ぐずぐずしないで、行って水を汲んでおいで。
おまえの兄さんがよく太っていいようといまいと、
明日あいつを殺して煮るんだ。パンも一緒に焼けるように、
私はその間にパン種をこねるとしよう」
こうして、グレーテルは悲しい気持ちで、
ヘンゼルを煮る水を運びに行きました。
朝早くグレーテルは起きて、火を起し、
水の入った大なべを火にかけなければなりませんでした。
「さあ、なべの水が煮立つまで気をつけるんだよ。
わたしはパン焼き釜に火を起して、パンを入れておこう」
グレーテルは台所に立って、血の涙を流しました。
そして、こんなことなら”森でけだものに食べられてしまった方が
良かった”と思いました。
そうしていれば、ふたり一緒に死ねたし、こんなに心を痛める
こともなかったし、わたしの大好きな兄さんを殺す為に、
自分でお湯をわかすこともなかったのに。
ああ、神様。わたしたち、哀れな子どもをこの苦しみから
お救いください。
その時、おばあさんが大声で言いました。
「パンがこんがりいい色になって焼き上がっているか、
中をのぞいておくれ。
わたしは目が悪くて、そこまでは見えないんだよ。
もし、おまえにも見えなかったら、そこの板の上にお乗り。
そうしたら、わたしが中へ押し込んでやるよ。そうすれば、
中を歩いて見ることができるだろう」
けれども魔女は、グレーテルが中へ入ったら、かまどを閉めて、
グレーテルも熱いかまどの中で焼いて食べてしまうつもりでした。
悪い魔女はそう考えて、グレーテルを呼んだのでした。
ところが、神様がグレーテルにそのことを教えてくれたので、
グレーテルは言いました。
「どうやったらいいのか分らないわ。先にやって見せて
ちょうだい。おばあさんがその上に乗ったら、
わたしが中へ押し込んであげるから」
そこでおばあさんは板の上に乗りました。
おばあさんは軽かったので、グレーテルはできるだけ奥のほうへ
押し込みました。
そして大急ぎでかまどの戸を閉めて、鉄のかんぬきを掛けました。
すると、おばあさんは熱いかまどの中で叫び、うめき始めました。
けれどもグレーテルはそこから逃げて行きました。
そしておばあさんはみじめに死ななければなりませんでした。
グレーテルはヘンゼルのところへとんで行き、戸を開けてやると、
ヘンゼルが飛び出して来ました。
ふたりはキスをしあい、喜びました。
魔女の家には宝石や真珠がたくさんありました。
ふたりは宝石や真珠でポケットをいっぱいにして外に出ました。
それから家へ帰る道を見つけました。父さんは、またふたりの姿を
見て喜びました。
子ども達がいなくなってからというもの、父さんには1日も
楽しい日はありませんでした。
これで父さんは金持ちになりました。けれども母さんの方は
死んでいました。
以上です。
本当に怖いです。
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