性の主従関係

二千年以上昔　古代ローマ時代　ガラリヤの領主であるヘロデ王

その王の心を妖しい美しさで魅了する義娘　王女サロメ

だが、義父の振舞い方にウンザリしている

ヘロデ王は自身の誕生祝の宴でサロメの踊りを所望する

しかしサロメは如何なる褒美を与えると言われても踊らない

王者の男達から想いを寄せられても振り向かない

何故なら彼女の心は洗礼者ヨハネに夢中だったから

この想いを遂げようとあらゆる手段で彼を誘惑する

しかし神にのみ心を捧げている洗礼者ヨハネには届かない

洗礼者ヨハネに拒絶されればされる程　情熱帯びてくるサロメ

これを見た　彼女に想いを寄せている兵士は絶望して自殺

そして　ついにヘロデ王の願いを叶える決心をしたサロメは官能と刺激に満ちた七つのベールの踊りを披露する

踊りながら　最後の一枚まで脱いだサロメ

裸身が月光に包まれた姿　余りの美しさと激情の表現に感動するヘロデ王

そして王はサロメに望みのものを問いかける

「銀の盆にのった洗礼者ヨハネの首が欲しい！」

サロメは盆を受け取ると狂乱の混じった喜びで

「今こそ口付けができる！！」

純粋さ上に湧き出た狂気と愛の物語「サロメ」


それから二千年以上の時を得て生まれた今宵の物語は
「愛の嵐」（1972年イタリア・アメリカ映画）

１９３４年　ハンガリー
男はナチの親衛隊員　女はユダヤの美少女

ナチスのユダヤ人強制収容所
マクシミリアン・アルドルファ親衛隊員ことマックス（ダーク・ボガード）は医者に成りすまして如何わしい写真を撮っていた
そこに送り込まれてきた少女ルチア（シャーロット・ランプリング）に目を付け、彼の性の玩具として調教してゆく

絶対的な権力者と弱者の関係

しかし　彼は　少女の肉体に身も心も溺れてゆく

少女は「死」と引換えに彼に「服従」する

退廃の宴
見初められた少女は　ナチの親衛隊員の前で踊る
スレンダーな肢体にサスペンダーにナチ帽　黒のロングレザーグローブ
マレーネ・ディートリッヒの「望みは何と訊かれたら」を歌いながら


私が愛するのは　生きるため　そうでなければ　楽しむためよ

たまには本気で愛することもあるわ

きっといいことが　ありそうな気がして

望みは何かと訊かれたら　分らないと答えるだけ

いい時もあれば悪い時もあるから

望みは何かと訊かれたら　小さな幸せとでも言っておくわ

望みが叶って幸せになったら　すぐにその日から　悲しい昔が恋しくなってしまうから　

不幸だった昔が・・・


宴の踊りの褒美は　少女が嫌っていた男の　生首

それから　二人は更に深く深く堕ちてゆく

そして　少女は強制収容所で　生き延びた

２３年後　１９５７年冬のウィーン
男はホテルのナイトポーター　女は高名な指揮者婦人
出逢ってはいけない二人が再会
“あの時”の快感　魔力が再び甦る
封印が解かれたとき　二人は遂に地獄の底まで堕ちてゆく


イタリアの女性監督リリアーナ・カバー二の作品です
シャーロット・ランプリングの退廃ダンスシーンは結構有名でポスターにもなっています
正直、この作品はストーリーは解るのですが、意味が解りません！
が、あのダンスシーン観たさ、後、ホモダンサーが親衛隊員の前で踊るバレエシーンも好きで何回か観てます
この二つは必見ですよん！！
あのシャーロット・ランプリングのカッコはしてみたいぃ！！（笑）

なんで冒頭にサロメの話を書いたか？
「愛の嵐」の退廃ダンスシーンを観ると「サロメ」が思い浮かぶからデス

最も愛する男性に拒絶されて、最後に殺させる事によって愛を得たと歓んだが、所詮失ったに過ぎないと感じる女性と、最も憎むべき男性に快楽を求めてしまう女性、全然ストーリーは違うんですが、破滅的で、エロティシズムと狂気の愛に満ちた「退廃美」な印象がダブるんですよね

エロティシズムと言えば、極限状態に追いやられていく「愛の嵐」の二人
マックスは見る見るやつれていく事に対して、ルチアはますます妖しく美しくなってゆく姿
この違いが妙に生々しい！！
少女から指揮者婦人、そしてマックスとの愛欲の日々を送るルチア、冷たく無表情な瞳は変わらないけれど、この変貌振りが素晴らしいです

後、食料不足で弱っていく二人、真っ赤なジャムを舐め合いながら、次第に求め合う姿が妙にエロかった
食欲より肉欲
あんな関係には憧れるけれど、私は極限状態になったら肉欲より食欲ダナ。。。

少なくとも私にはワカラナイ部分が多くかなり気だるい作品なので、「妖うさ」「背徳的」「退廃的ムード」など抽象的な雰囲気を感じたい時にはオススメの作品デス。。。