馬鹿な友達②

彼とは２０年の付き合いになる。

ネットのコミュニティで知り合った「世間知らずのお人好し」で、
私が血気盛んだった頃に起こしたトラブルを収拾するために、わざわざ遠方から駆けつけて来てくれたりした数少ない友人だ。

にわかＳＥだった彼は、ＩＴバブルの崩壊以降、困窮した生活を続けているために、安易に怪しい儲け話に乗ってしまったらしく、
ついでに事故からの生活再建に苦しむ私を助けるつもりで誘って来たと言う訳だった。

しかし、詐欺やら不正受給やら、つまらない悪知恵を働かせる半汚れの連中と嫌ほど関わってきた私からすれば、もっとリスクが少なく金儲けが出来る話くらい幾らでも知っている。

ただ、人としてそこまで落ちぶれたく無いから手を出さないだけ…
車体ナンバーを削った高級車より、汗を流して買った中古の軽自動車の方が乗り心地が良いものだ。

彼を責める気持ちは無い。
事の重大さを理解していない単なる”馬鹿“なのだから…。

何よりマズイのは、ブローカーの背後に居るであろう面倒な奴に目を付けられて、口座を作らされたり、受け子をやらされたり、違法ドラッグの売人にさせられたり…

犯罪スレスレだけど、言い逃れが出来そうな（完全にアウトだが）実行犯に仕立てあげられる事。

今回の偽装結婚も、思いとどまる様に説得したら、「既に一度、プローカーの手配でフィリピンへ渡航してしまっているから、今更断れない」と言うので、
後々、何らかの尻拭いが必要だと知りながらも強行策に出るしかなかった。

～まだ続く