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減塩は、真っ赤な嘘

2016年05月15日 09:18

塩分は血圧を上昇させ、脳卒中の原因になる。そこで、減塩運動が展開されてからもう60年近くになる。

 米国の医学者L.K.ダールが1950年代に日本を訪問し、鹿児島から青森までの1人当たりの食塩摂取量と高血圧脳卒中(出血)の関係を調べた。その結果、当時1人1日平均約14グラム塩分を摂取していた鹿児島の人たちに比べ、約28グラムを摂取していた秋田青森の人たちの高血圧脳卒中罹患率が格段に高く、塩分=「高血圧脳卒中の原因」という図式が確立された。これを受け青森秋田から減塩運動が始まり、全国に広がっていき、今では「1日の塩分摂取量は10グラム未満が望ましい」とされている。

 昔の味噌汁醤油、つけ物、梅干しなどの塩辛い味に慣れている我々、団塊世代にとって、減塩のこれら食品などまったくおいしくない。

 そもそも塩は、人類最古の調味料であり、生命にとって一番大切な栄養素であったからこそ、塩を交易する場所に「塩川」「塩島」「塩谷」「塩原」など「塩」に因んだ地名がつけられた。西洋にも、

・ソルトコーツ(Saltcoats)…スコットランド
ザルツブルク(Salzburg)…オーストリア
・ザルツギッター(Salzgitter)…ドイツ(salz=ドイツ語で「塩」)

 という地名がある。

 古代ローマ時代から、食物の価値は「おいしいか、どうか」で決まり、「おいしいものこそ、健康によい」と考えられていた。「塩こそ、最高の健康食」と考えられていたので、塩(sal=ラテン語)から「健康」を意味する「salus」という言葉がつくられた。生野菜には塩をかけて食べていたので、salad(サラダ)という。

 生命先祖は、約30億年前に海で誕生したアメーバ状の単細胞生物である。それが分化、分裂、増殖して、多細胞生物に進化し、その頂点に哺乳類のヒトが立っている。

塩の効能

海水」と「血液」や「羊水」の浸透圧は酷似している。血液のことを「血潮」ともいう。人体を構成する60兆個の細胞は今でも、「血液という海の中に浮遊して生きている」と言っても過言ではない。

 昔、炭鉱夫が地下の蒸し暑い坑内でツルハシを使って作業するとき、あまりに大量の発汗で体内の塩分喪失痙攣を起こして死ぬ者が続出する、という事故が多発した。その後、鉱夫に塩をなめながら労働させると、そうした事故がなくなったという。


 1930年代に、アメリカのテイラー医博が「塩抜き」の食事を続けて、自分自身で人体実験をしたところ、以下の結果から中止を余儀なくされたという。
・3~4日目=食欲低下、冷や汗
・5~7日目=名状しがたい全身倦怠感
・8~9日目=筋肉痙攣が止まらず、実験中止

「塩」の効能についてまとめてみると、

(1)鹹味(かんみ)=塩味を出す
(2)殺菌力がある
(3)旨みを出す…肉や魚の身を引きしめる

 のほか、

(4)体液の浸透圧を一定に保ち、水分の代謝や体液のPHを維持する
(5)神経の興奮の伝達に関与する
(6)筋肉の収縮作用に必須
(7)胃液、腸液、胆汁などの消化液の原料
(8)体内の有毒物質の解毒

 などがあげられる。よって塩分不足は、新陳代謝の低下(体の老化)、食欲減退、筋肉痙攣心臓の収縮力の低下=血圧低下(脱力感、倦怠感)などを引き起こす。

 25~75歳までの20万7729人を対象に行われた米国国民栄養調査の結果、アルダーマ博士が世界的に権威のある医学誌「Lancet」に発表した論文をみると、「食塩摂取量の一番多いグループの死亡率が一番低く、食塩摂取量が少なくなるほど死亡率が高くなっている」のがわかる。

 止められると3分で死亡するほど大切な空気(酸素)も、吸い込みすぎると痙攣や失神を伴う「過呼吸症候群」に陥る。よって「息は吐いてから吸え」ということで「呼吸」という。

 塩分も同じだ。お風呂サウナ、岩ばん浴、運動などで発汗し、人参ジュース生姜紅茶で排尿を促して塩分を排出してから摂ると、健康に悪いどころか、健康を増進するのである(塩は水とともに行動するので発汗、排尿で体外へ排出される)。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

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