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鬼平

2015年09月21日 05:21

鬼平

風も絶えた、春の夕空に雁がわたっているそのとき・・・・・・火付盗賊改方の長谷川平蔵へ、二人の浪人者が斬ってかかった例によって、着ながしに塗笠をかぶった、市中見廻り姿の平蔵へ、背丈の高い浪人が、息もつかせずに斬り捲(まく)ってきた必殺の一刀を打ち込んできた浪人者の左側へ飛びぬけさま、近江守助直二尺四寸余の一刀、抜く手も見せずに浪人へ浴びせかけたあわてて振り向いた無頼浪人の左耳が平蔵の一刀に切り飛ばされ、左肩からも血が迸(ほとばし)ったのめり込むように倒れかかる浪人へ見向きもせず、塗笠をかぶったままの平蔵が、血相を変えて迫る、もう一人の浪人の左側へ颯(さっ)と身を移し、「酔いどれめ、おれが斬れるか」と、いった飛びちがって、双方がぱっと向き直った瞬間に、平蔵は相手の刀を無造作に打ちはらった打ちはらわれた浪人の刀は手をはなれ、横ざまに飛んで落ちた浪人は愕然となり、刀を拾って飯倉の通りへ一散に逃げた平蔵に耳を切り落とされた浪人も、這うようにして、石段下北側の木立の中へ逃げ込もうとしている夕暮れのことで、八幡宮の門前にいた人びとは十名に足らなかったが、期せずして、よろこびの声をあげた二人の無頼浪人は、門前の茶屋へ入り、したたか酒をのんでおいて、「この酒は、水で薄めてある。けしからん」難癖をつけ、茶屋の老爺を撲りつけたり、蹴倒したりしたそこへ、西の久保八幡宮の参詣を終えた長谷川平蔵が通りかかり、浪人どもを懲らしめたのだ刀身をぬぐって鞘へおさめた平蔵が件の茶屋へ入り、老爺をいたわり、「酒をたのむ」塗笠をとって腰掛けへかけた平蔵へ、「長谷川様。とっくりと、拝見させていただきましてございます」声をかけ、茶店へ入って来たのは、この近くの扇屋・平野屋源助方の番頭で、名を茂兵衛といい、年齢(とし)のころは四十をこえていよう「実は長谷川様。これから御役宅へ参じるつもりでおりました」平蔵の側へ身を寄せた茂兵衛が、「悪い男(の)をひとり、見つけましてございます」茂兵衛が耳もとでささやくにつれ、長谷川平蔵の顔色が引きしまってきた

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