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【お題日記】あなたは、だれに恋してますか?

2013年03月04日 03:29

【お題日記】あなたは、だれに恋してますか?

恋というものではないかもしれない。相手は男だし、昨年亡くなってしまったから。

 詩人吉本隆明がその人だ。昨年、三月に亡くなった。訃報テレビで知っていたが、友人が親切にも訃報のメールを送ってくれた。

 大切な人の死はボディブローみたいに後でじわりと効いてくる。先日死んだ母もその一人だ。棺におさめられた母のデスマスクカメラで撮ったが、その写真を観たいとは今は思わない。死んだという実感がない。母と会ったらこんな話をしようとあれこれ考え、はたと気づく。死んだんだと。

 吉本さんが亡くなった直後はどうということもなかった。今は、もう少し生きていて欲しかったと思う。「この人が生きている限りこの世の中捨てたもんじゃない」とは、1960年に自死した学生歌人岸上大作の言葉だったか。まったく岸上の言うとおりだと思う。
 
 吉本さんの著作は、大阪市図書館で調べると、300冊以上あるようだ。代表的な著作である、「言語にとって美とはなにか」、「共同幻想論」、「心的現象論」の三部作はそれ相応の覚悟をしないと再読できそうにない。「心的現象論」なんか、わからなくて気が狂いそうになったこともある。

 講演会で何度か聴衆の一人として貌を見、声を聞いた。でも、その憧れの人と直接対面したことはない。別れた嫁が、なんでそんなに必死になるのか?相手は女でもないのに。と言っていた。この女には逆立ちしても視えない世界がある。この認識は、夫だった頃は寂しく、少しだけ悲しかった。吉本隆明という表現者の言葉が、どれほど私の内面に喰い込んでいるかわからないのだ。ソ連という消失してしまった国家に執着し、文学、思想を捨て切ることができないでいる、二十歳から今日まで私の内面が描いた軌跡などわかろうはずがない。

 吉本隆明への私の想いは恋なのかもしれない。この想いが恋ならば、死ぬまで恋が続くのだろう。なぜこうなってしまったんだろう。私にはもうわからなくなっている。

 吉本さんの画像を検索し、たくさんの画像を眺めていると涙が出てきた。親が死んでも泣かなかった極道者が、アカの他人の死に涙してしまうのだ。

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