- 名前
- onchi
- 性別
- ♂
- 年齢
- 36歳
- 住所
- 静岡
- 自己紹介
- ご訪問ありがとうございます!chiと申します。男子として生を受け、趣味はゲームと料...
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Exec_HERO=Hibiki./
2010年06月19日 00:06
ーだからさ、少年が辛いと思うのは仕方がないことだけど、なら・・・
・・・子ども心に覚えている姿がある。とは言え高校時代のそれであるので「子ども」とするにはあまりに幼さを排しているしているが「子ども心」と自覚する以上、自分は子どもなのだ、きっと。
目の前には「あれ」がある。夏の風物詩にして、心に「響」く「音」の象徴の一つ。
祭囃子の、盆踊りの、音が「響」く。
ふと、盆踊りの輪に入れない男の子を見つけた。ステップに、振りに入れず、自分自身に苛立っている。そう見えた。
目の前には「あれ」がある。原初的な「打撃」によって「音」を作り出す「響」の象徴の一つ。
・・・彼はヒーローだった。嫌だと、辛いと言われていることを、やってのけた。何故ならそれはお話だからだ。虚構、嘘の塊。だから・・・
祭囃子の、盆踊りの音が「響」く。ただし、音源はCDによるものだ。目の前にある筈の「それ」の音は、スピーカーから流れるデジタル信号の模倣に過ぎない。
男の子が泣き出した。ぶつける場所を知らない苛立ちはついに泣き出す事で発散の場を見つけたらしい。だが、それはあくまで一時的な事だ。泣き疲れれば収まるが、きっとまた同じように苛立ちが溜まるに違いない。その姿に、どこか自分を照らし合わせた。
「叩けよ、あれ」
不意に背後から声がした。よく見知った「あいつ」の声と同時に、背中にぶつかるものがあった。
「バチ」だった。
・・・物語のヒーローにはなれない、現実にいないという大前提があるが故、前提を覆した瞬間、それはヒーローでは無くなる。だから、温は「彼」そのものにはなれない。
―なら、鍛えればいいんじゃないかな?少年が、辛くならないように、心を。
地面に転がる二本の棒を手に取る。腰だめの構え方は遥か昔にならった型と「物語」の真似の混合、不格好としか言いようがない。だから、大声で叫び、一打目を叩きつけた。そう、あのヒーローが叫ぶ言葉は・・・・
「爆裂烈火の型!」
勿論、祭りのプログラムにはこの太鼓は組まれていない。スピーカーから流れる盆踊りで締めとする予定だったのだ。よって、怒号の瞬間、場は静まり返った。
「あいつ」が祭囃子の音量をあげる。叩きつけた「太鼓」の響きに負けないように、また自分は、囃子に合わせるように、叩く。譜面はいらない、ただ、一心不乱に叩く。
最初は、数人だ。段々と、祭囃子に乗って踊りを始める。その中に先ほどの「少年」の姿もあった。そのせいもあってか、更に打撃は増していった。
そして、陽が傾いた。それは祭が終わる合図でもあり、必然的に温は片付けの要因として駆け回る事になり、今年の祭も無事に行われたといえる。額の汗を拭う頃には既に陽は沈んでいた。
・・・だからこそ、魂くらい、魂くらいは真似をしたい。心の基準に「彼ら」を夢見たい。蔑まれようと、馬鹿にされようと。
「お疲れさん」
背中にひんやりとした感触がする。缶コーヒーは嬉しい事だが、いきなりの背中への攻撃はやめてほしいと抗議の声「あいつ」は・・・親父はこう遮った。
「まあ、太鼓、悪くなかったんじゃないか?」
これは珍しい。親父から褒められるとは、恐らく明日は石の雨が降るだろうと思いつつも、今がチャンスと頭の中で自分が囁く。「あれ」をやるチャンスだ、よし。
『そりゃあ・・・結構鍛えてますから。』
シュッ、指が宙を切る。その筋の人間ならこの動作こそ「彼」のお決まりのポーズであると知っているのだが、そんな通な人間はこの場にいまい。故に・・・
「・・・は?」
場を静寂が支配した。決めのポーズが不発しフリーズした自分と、呆気に取られた親父を再起動させたのは「撤収完了」の知らせだったが、その知らせを受けるまで、五分の時間を有したのは、言うまでもない。
― その、僕にはそんな・・・響鬼さんはどうしてそんなに強いんですか?
―少年・・・そりゃあ、鍛えてますから。シュッ。
このデジログへのコメント
誰にも出来ないこと見つけだせ それが君の響き~♪
素晴らしい(笑 面白いですね!
> misasaekiさん
いつもありがとうです!!響鬼さん格好いいですよね!
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