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人間観察。

2008年09月18日 10:42

仕事帰りの電車の中は22時を過ぎても少し混みあっていて、疲れて家路につく人々の仮眠の場であった。
いきなり『じっとせいっ!』との怒声が耳に飛び込んできて、辺りはしんと静まり返った。見渡すと、叫んだ当人であろう人はむっと顔を強張らしていた。小柄ながら白髪を戴く貫目のある老人である。
はしゃいでいた新卒風のサラリーマン群は苦笑しつつ黙り込み、目だけで会話をしている。いたたまれない雰囲気にのみ込まれ、なんともばつが悪そうであった。
その付近に幅広に座っていたいかにも大阪風のどしっとした体躯をもつおばちゃんは、いたずら小僧たちのその様を見て、自分が叱りつけたかのように満足げな視線を注いでいた。
離れた場所ではクスクスと笑い声がこぼれはじめ、しだいに元の疲れた車内へと戻っていった。

地下鉄に乗り換えると、大変な混みようの車内。クーラーは利いているが、蒸し暑い。
昇降口付近では本など読んでいたら迷惑がられると思い、吊革が手に出来る範囲に身を寄せる私。
ねとっとした嫌な感覚が腕に伝わり隣を見れば、汗まみれの太った男。秋葉原大阪日本橋を徘徊していそうな彼は、絶えず白地に青い縞柄のハンカチで汗を拭っている。満員電車には迷惑な体質をもつ彼には少し距離を空けたいが、・・・。
二つ目の駅で前の座席が空いた。そわそわし始めた彼を横目に私は、熱帯雨林からの解放を願い、空席を満たした。彼は汗を拭いながら私を恨めしそうに見下ろしていた。

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