遥か・・・（出会い）

当時、おれはまだ若く仕事に追われる毎日を過ごしていた。そんな日常が続くと当然ある種のむなしさを覚え非日常を求めたくなるものだ。

ある日、友達に教わりチャットルームというのに行ってみた。どこの誰かともわからない人とパソコンを介して話をする事に軽い緊張感を覚えた。
入ったのは音楽関係のルームだった。１対１ではなく複数人数で話せる部屋だ。何人かと最近のロックバンドの話もしたが本当に若い人たちとはあまり会話も弾むわけも無い。最新動向など知るわけも無い。
数日間はアクセスし、数人と話したが多少うんざりし始めていた。

そんなある日控えめな女の子が入ってきた。
Ｙだった。
若者たちが最新ヒットチャートを賑わす楽曲の話をする中、俺が投げかけるちと昔のバンドの話にわずかに遅れながらも反応してきたのもＹだけだった。
そんな反応の仕方も控えめで女の子ぽいと感じて、いつしかＹを待つためにルームに通うようになっていた。Ｙもなんとなくだが時代遅れの俺の話にしか反応しないようになっていると俺には思えた。

「今日も来るかな？」仕事に追われながらもその日の夜が楽しみになり、昼間の空虚感や忙しさは、いつの間にか期待感とトキメキに変わっていた。