- 名前
- 松田文学男爵
- 性別
- ♂
- 年齢
- 60歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 君はきっと、 僕のことが好きなんだろう。 そんな君を前にすると、僕も君のことが好きな...
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「早く引っ越したほうが良い。私の力ではどうしようできない。ここは・・・」
2021年07月24日 22:06
昔、炭坑が廃山になり、それまで皆が住んでた区域の炭住があちこち空家になり、
それを取り壊す為、残ってる人達は他の区域の炭住に移された。
幾日か経って、突然修行僧が我が家にやってきた。
「早く引っ越したほうが良い。私の力ではどうしようできない。ここは・・・」
詳しくは覚えてないけど、そんな事を言ったと思います。
当時、真面目一徹の父が、仕事を失ったショックで病気になり働けず、
私達子供もまだ幼く、母がパートの掛け持ちで何とか暮らしている状態で、
引っ越したくても引っ越せない状況。
「みんな心配するんじゃない」と父はお坊さんを帰らせ、
私達を安心させようと、いつもは見せてくれないお笑い番組を見ていいと許しが出たり、お小遣いを貰ったり、
とても幸せな出来事が続いたので、すっかりその修行僧の事は忘れてしまった。
我が家の横の棟は空家で、「あの家で遊んだら駄目よ。傾いているから危ない」と親に言われていた。
でもその空家は、炊事場の水道が出たり、
家の中には家財がほとんど残ってて、テレビも電源がついて番組が見れたので、
私と妹は親の目を盗み、毎日のように遊んでた。
(今思えばおかしな状況です。
でも妹と昔話をすると、
「あの頃は楽しかったね。でも何で電気ついたんかなぁ?前の住人が夜逃げしたすぐあとだったんだろうね」
と当時の事を話すので、私の記憶違いではないはずです)
ある日、空家で急に妹が寝てしまったので、「布団かけなきゃ」と、私は押し入れを初めて開けてしまった。
埃っぽい押入れの中には、小さな仏壇と御位牌、線香とロウソクの燃えカス、そして赤いお米が散乱してて、
見ているうちに真っ赤な血が流れているように見え、怖くなり妹を起こそうと呼ぶが声が出ない。
ふと押入れの上を見上げると、縄で吊るされた髪の長い日本人形がクルクル回っていた。
それからどうやって妹を連れて家に戻ったか、記憶がありません。
妹は全く何も見てないようで、次の日も「遊びに行こう」と私に強請りましたが、
「お母さんに怒られたからもう行かない」と嘘をついてなだめました。
それから1年もしないうちに、父が首を吊り自殺しました。
第一発見者は私だそうです。でも記憶がありません。
「すまん。カァチャンと○○(妹の名前)を頼む」
父の痩せ細った白い足が木箱をのぼる。
今でもたまに、そんな悪夢を見ます。
あの日、修行僧は何を父に言ったのか。
あの日、私があのお人形を見なければ・・・
それがずっとずっと心残りです。
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