- 名前
- ケント☆
- 性別
- ♂
- 年齢
- 59歳
- 住所
- 神奈川
- 自己紹介
- 本気で愛し合える女性を求めてます いっぱい気持ちよくなってほしい♪ 自分がいくより相...
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《陽炎》5-5
2018年02月14日 21:16
激しく求め合ったあと…
彼女は先に眠りについてしまった
互いの事、何も知らぬまま抱き合い…
僕の隣で、僕の腕枕で静かな寝息を立てている彼女…
僕は先ほどまで激しく求め合った彼女の、あどけない寝顔があまりに愛くるしく感じた
寝煙草は嫌いだが、腕枕を外さず彼女の眠りを妨げないように片手でたばこをくわえ火をつけた
僕は紫の煙が視界をふさぐ中、今日1日のあまりに突然な出来事を思い出した…
彼女の事を、僕は何も知らないままだ…
もう一度その事が頭をよぎる
明日の昼には、彼女は帰ってしまう…
その前に“連絡先だけでも聞こう”と僕は思い、たばこの火を消して、心地良い眠りについた…
・・・・・・
翌朝、僕が目覚めた時、僕の隣にいるはずの彼女の姿は既にそこには無かった…
僕は急いで飛び起き、彼女の部屋に向かったが、そこにも彼女の姿は無かった…
慌てて浴衣のままフロントへ向かい、彼女の事を訪ねると、彼女はつい今し方会計を済ませバス停へ向かったと言われた
僕は旅館のサンダルを履き、急いでバス停へと向かう
こんなに走るのは何年ぶりかと思うくらいの速さで山道を抜け、海岸通りにでてバス停を見た
ちょうどバスが止まり、彼女が乗ろうとしているところだった
僕は“おーーーい!!”と叫び、カラコロとサンダルを鳴らしながらバスに向かって走る
彼女は気づいてこちらを見たが、にっこりと笑顔を見せ、そのままバスに乗り込んでしまった
追いかける僕
だが走り出したバスは
僕を待ってはくれなかった…
夏の日の陽炎のように現れた君は、僕の心にほんのひと時涼やかな風を吹かせ
そしてまた陽炎の中に
去っていった…
僕は足取りも重く、旅館に帰ってきた
旅館の老夫婦は心配そうに僕に声をかけてきたが、僕の耳には届かなかった…
僕が部屋に戻ると、窓辺のテーブルに一枚の紙切れが乗っていた…
“忘れないでね…
またきっと…
逢えるから…”
そう書いてある置き手紙…
“何を根拠に…?”
僕は苛立って紙切れを握りつぶそうとした…
しかし…
出来なかった…
冷蔵庫からビールを取り出し、一気に煽る…
飲みかけのビールをテーブルに置き、たばこに火をつけ、ロッキングチェアーに体を預け外を眺める僕の心には、言い知れない虚無感が漂ってた…
翌朝、僕は旅館をあとにした…
彼女と歩いた山道を抜け…
彼女とはしゃぎあった海を眺め…
彼女が去っていったバス停につく…
たった1日半…
なのに重い…1日半…
僕はバスに乗り込み
家路へとつく…
僕の街に帰ってきた…
重い足取りだが、荷物は宅配で送ったので何もない
僕は家の前のいつものコンビニで、いつものようにたばこを買って帰る
ドアを開け
カウンターにむかい
「たばこ…」
と言えば
僕がいつも買うたばこを、この店の店員達は出してくれる…
他に話す事はない…
「こんにちは~」
明るい女性店員の声…
???
その声を聞いた途端
僕は我を失い
声の主を見る!
!?
長い髪を後ろで1つに縛り
大きな黒縁メガネの、化粧っ気のない笑顔が僕の目に飛び込む
女性店員はにっこり微笑んで
「おかえりなさい」
と、優しい声で僕に話しかけた
「まさか…?」
僕は驚いた…
その女性店員は紛れもなく、彼女だったからだ
彼女はポケットから何かを取り出し、僕にそっと渡した
手紙?
僕は周りに誰もいないのを確認してその場で封をあける
今度は彼女が慌てて真っ赤になっている
“私のアドレスです
5時であがるので
よかったら連絡下さい”
その言葉の下に、彼女のアドレスが書いてあった
レジの中で顔を赤らめ俯いている彼女に僕は
「待ってるよ…
5時に店の前で…
待ってるから…」
そう答えた
彼女は俯いたまま
「うん…」
と真っ赤な顔で返事をするのがやっとだったようだ
5時に店の前で彼女と待ち合わせ
僕の部屋へ招く
彼女はいろんな事を話してくれた
僕が店から荷物を出した時、行き先を確認した事
彼女がそれに合わせ、同じ旅館にきた事
そして…
離婚する前から
彼女が僕の事を
想っていたこと…
僕らはその夜
ほんとの愛の始まりを
確かめあった…
FIN
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