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医者はベンツに乗るため患者を薬漬けにする

2016年05月18日 09:04

近年、精神科医療は、向精神薬をできるだけ多用しない、可能なら使わない方向へと、着実に進んでいる。過量服薬による致死や重篤な副作用、離脱症状の危険性、薬物依存など、様々なリスクが明らかになってきたからだ。にも関わらず、未だに患者を薬漬け状態にしてしまう精神科医の数が、それほど減少していないのはなぜなのか…。

偶然生まれた向精神薬
疑われ始めた治療効果

全ての医療行為にエビデンスが要求されるのは当然のことだが、こと精神科における薬物療法に関しては、「医学的根拠」と呼べるものが非常に乏しい。例えば、精神科が取り扱う2大疾患である「うつ病」と「統合失調症」。前者は、ノルアドレナリンセロトニンの不足が発症原因で、後者ドパミンなどの失調と、心理的脆弱性、遺伝的因子などが重複するのが原因と“定義”されているが、それらを客観的に裏付ける生物学的検査のデータは、世界中探しても存在しない。

それらの病因は、脳神経学や神経生理学の研究で複数の脳内神経伝達物質の存在が明らかになったことで、“後付け”的に定義されたものである。そもそも、活動している人間の、脳内ノルアドレナリンセロトニンの定量を測定し、その平均変化率を観察する計測方法が無いのに、検査データが存在するはずがない。だから、それら疾患に対して用いられてきた抗うつ薬抗精神病薬抗不安薬などの精神医薬も、生物学的な作用機序が説明できるものではなく、臨床観察上の「偶然」が、いつの間にか薬物療法の定石となったものと言える。

各種の向精神薬が、精神疾患の様々な症状に対してある程度の緩和・鎮静・改善効果を持っていることは否定できないが、それが根治または寛解をもたらす可能性は極めて低い。2009年、NIMH(アメリカ国立精神衛生研究所)の所長も歴任した精神科トーマス・R・インセルは、「精神疾患を持つほとんどの人々に対して、向精神薬は現状打破をもたらさない」とコメントし、グラクソ・スミスクラインアストラゼネカなどの大手製薬メーカーも、2010年頃から次々と精神科領域の新薬開発から撤退を始めている。

副作用が少ない薬」が生んだ
新たな副作用

およそ60年間、信頼できる医学的根拠が無いまま処方され続けてきた向精神薬だが、それでも「医薬品」としての改良は繰り返された。その代表例が、軽度~中等度のうつ病に対して使われるようになった、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」だ。それ以前に使われていた、いわゆる“三環系”抗うつ薬副作用を抑えるため、神経伝達物質のうちセロトニンの再取り込みだけを「選択」して阻害するよう設計された薬である。

それまでの抗うつ薬に付きものだった、極度の口の渇きや便秘、肝機能や血管の障害などの副作用が減少したことで、多くの精神科医が好んで使うようになり、我が国だけでも現在、100万人以上が使用中と見られている。しかし、確かに従来の副作用は少なくなったものの、今度は新たな問題が現れた。突然の体温上昇、異常発汗、筋肉のこわばり、興奮や錯乱を催す「セロトニン症候群」、焦燥や不眠、衝動性、軽度の躁状態に陥る「賦活症候群」、そして“元々の精神疾患以上に通常の生活を困難にする”と言われる「SSRI離脱症候群」など、三環系抗うつ薬より面倒な副作用が、続々と報告されるようになったのだ。

パーキンソン病の治療薬として開発された「ドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)」も、麦角系と非麦角系の2種が開発され、レボドパよりも脳に対する刺激が少ない薬として、一部の統合失調症患者に使われるようになった。しかし、麦角系は軽度の心弁膜症の発症、非麦角系は特発性過眠症を引き起こす危険性が指摘されている。

こうした状況を受け、国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部は2013年、「精神科医療には、向精神薬を使わざるを得ない場合もあるが、漠然とした投薬は避けるべき」と指摘している。その『漠然とした投薬』こそが、精神科医療で未だに無くならない“薬漬け”の根源なのである。

患者のために止めないのか
私腹を肥やすために止めないのか

精神科の分野では、なぜ「薬漬け医療」が無くならないのか…。この問いに対して、実際に精神科医療に携わっている医師と、そうでない医師とに意見を聞くと、見解が真っ二つに分かれる。

多少の語弊は承知の上で、『薬が好き』と思われる精神科医たちは、口を揃えて「減薬や断薬は危険を伴うので、患者本人や家族が嫌がる」と語る。それはそうだろう、睡眠薬抗不安薬などの多くを占めるベンゾジアゼピン系薬剤は、使用が承認された当初から強い薬物依存症が指摘されていた。前述のSSRI離脱症候群では、「シャンビリ」(シャンシャン聞こえ続ける不快耳鳴りと、手や指先がビリビリ麻痺する感覚)という言葉が医師と患者間で共通認識として語られるほど、減薬・断薬時の苦しい症状が発生する。ナルコレプシーや注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者に対して処方されることが多いメチルフェニデートにいたっては、麻薬とほぼ同一の成分なのだから、長期服用すれば並大抵のことでは止められなくなるのが当然だ。

ちなみに警察庁データによると1998年以降、毎年3万人前後で推移している我が国の自殺者のうち、約80%がうつ病統合失調症、過度のアルコール依存症などの精神障害との関連が、遺書や本人の日記、家族の証言などから強く疑われ、うち、実際に精神科医療機関の受診歴がある自殺者の70%ほどが、減薬・断薬中の人だったとのこと。「自殺されるくらいなら、薬を出し続けた方が安全」との精神科医の意見も、一応は筋が通っているように思える。

しかし一方、精神科医・心療内科医を除く医師たちは、「適当に病名をつけて薬物依存にして、監禁しておけば、それだけで収入が得られるから」「患者生命より、監禁既得権や多剤投与の利権など、経済的側面が優先しているから」と指摘する。この“経済的側面”に関しては、家宅捜索でも実施しない限り証明することは困難なのだが、「診断時間を偽って報告」、「処方箋不正操作や提供していない医療サービスに対する偽請求」などの不正行為が発見され、精神科医が逮捕された事例が複数あるのは事実だ。

近年は、精神療法や社会療法などの効果が立証されつつあり、どうしても必要な時(急性期の発作など)のみ少量・少種類の薬を使い、それ以外は薬を使わない医療シフトする動きも盛んなのだが、「臨床心理士などコメディカルスタッフの人件費を捻出するより、これまで通り薬を出し続けていた方が経営的にラク…と考える精神科医が多い」との指摘は、的を射ているように思える。

いずれにせよ、どんな薬であっても多剤・長期投与は生命予後を悪化させる。できるだけ安全に減薬や断薬に向かわせるための方法も、すでに様々な学会で報告されている。精神科医療における薬漬けの悪慣習をなくせるか否かは、精神科医の「医師として」(「経営者として」では無く)の良心にかかっているわけだ。

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