手紙の続き

この前の、友人のお手紙の続きです。





あなたは私が男嫌いで、人間が嫌いだと思っているでしょうね。

それは大きな間違いよ、私は腑抜けが大嫌いなの。


だって聴いてちょうだい、私にまとわりついてきた男って
だいたい身体目当てのやつらばかり。

私と話をするのに、目を見ないで身体を見るのよ？


これって最低なことでしょ？


私がまるで男を誘惑しているみたい。
私は娼婦じゃないわ。


あなたたちはいつも、私の目を見て話してくれた。

あなたにはわかるでしょうけど、Kだけが私の目を見て話してくれた唯一の男性よ。



私の大事なところは肉体じゃない、ハートなの。
それを知っていたのね。


あなたは覚えている？みんなで出かけたときに具合が悪くなった私をKが抱えてくれたことを。



ベッドで休んでいた私に寄り添ってくれたあなたの優しさを、私はずっと忘れないわ。

そして、その横でずっと私の様子を伺ってくれていたKも最高よ！！

あなたが彼を離さない理由はよくわかってる。

私を抱えるKは、まるで騎士のよう。
そして抱えられる私はプリンセスね。


思い出が溢れてくるのが止まらないわ。
このまま何時間でも何日でも書き綴れそう。


バーム（バーミンガムのこと）の私の家には、あなたたちの写真がたくさん飾ってあるわ。

あなたの笑顔や、Kの笑顔
大切なお友達の写真もたくさん！！

家を訪れるすました淑女たちは、必ず言う言葉が2つあるの。
「このアジアンは綺麗ね」と、「このチャイニーズのどこがカッコイイの？」

綺麗なアジアンは、もちろんあなたのことよ。
私はこれを聞くたび、誇らしげになるの。
ブリテン一の美女が私なら、あなたは日本一なのねって。
でも、Kをチャイニーズと認識するのは許せないわ。
だから私はいつも訂正するの、「日本のサムライよ」

私はいつも、友人にあなたたちの話を聞かせるわ。
遠い日本にいる、私の夫と妹のあなたの事を。
あなたの服装に淑女たちは羨ましがり
Kの物語に、彼女たちはため息をついてこう答えるの。「私の彼がKみたいならいいのに」ってね。

ほら、やっぱり私の妹なのよ。
あなたの美貌は彼女たちを嫉妬させるのだから。


ブリテンの男は紳士だって誰が言ったのかしら？
紳士よりも武士のほうが何千倍も素敵よ。
だって、いつでも武士は命がけなんだもの。
私の女を熱く燃え上がらせるわ。


このまま私が生きながらえて、娘が成長するのを手助けできたなら
間違いなくこう伝えるわ、「結婚するなら、ダディみたいなサムライを愛しなさい」とね。
腑抜けた男なんかに娘を連れて行かれるなんて、こんな悲しいことはないわ。
大切なことは、いつでも娘を1番に考えてくれる、大きな愛よ。


あなた、私が死ぬことを悲しがっています？
そんな考えは間違いよ。私は一足先にKの元へ旅立つの。
心残りがないわけじゃないわ。私も娘とともに生きていたい。
でも、考え方を変えてみて。
私の娘は、あなたの娘でもあるの。
私は今まで、私たちの娘と考えて育てていたけど
いつだって私だけの娘とは考えていないわ。
あなたが私に言ってくれたでしょ？
「私たちは、同じ人を愛したの。それだけで私たちには、強い鎖で心が結ばれているのよ」
あの言葉で、私はあなたと心から姉妹でありたいと思ったし、
あなたに臆することなくKを夫と認識したわ。
Kには最後まで、生きているうちに説明しないことばかりだったけど
私たちの前に現れてくれるということは、怒っていないのよね？


ねえ、あなたは考えたことない？
今度私が生まれてくるときは、あなたの子どもとして生まれたい。
姉妹も親子も、家族なのよ。
もし生まれるのなら、間違いなくあなたの子どもがいいわ。
そして3人で楽しく生きていくの。きっと素敵なんでしょうね。


あなたたちは間違いなく、家族よ。
私たちを寒くさせるキングストンからの風から守ってくれる、大切な家族。







まだ続きますが、今日はここまでにします。




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