- 名前
- ヘクトパスカル2号
- 性別
- ♂
- 年齢
- 38歳
- 住所
- 神奈川
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2年目の1年前。
2012年10月07日 19:29
「ジャンキーなものばかり食べてるんでしょ?。」
篝火はよく通る声でタカシを詰問する。日本人ぽくない切れ長の眼は決してタカシを逃がしてくれない。タカシはいつもチーターに食われるトムソンガゼルの役だった。
「そんなに肥ったかな?。カロリーが高いものは控えてるけど…。」けど…沢山食べるのだ。
「カロリーが低くても沢山食べれば同じでしょ。それだけお金もかかるし、このお腹はカッコ悪いでしょ。顔立ちは良いんだから、勿体無いわよ。それ以上肥ったら、いい加減面倒見ないからね。」篝火はタカシの予想通りのコースに大量の火力を投入する。タカシは腹をつねられ、今回もあえなく轟沈した。要するに相性が良くて悪いのだ。
「面倒見られてる覚えはないんだけど…。」言い終わる前に…。
「毎晩ご飯作りに来てもらってるくせに。」と言われる始末だ。予想できている反論だからこそ納得する。相性が良くて悪いのだ。
「わかったよ。これ以上肥らないよ。」
「それだけじゃダメ。痩せなさい。」相性が最悪なのだ、タカシ的には。
タカシと篝火は去年の暮れからほぼ同棲し始めた。タカシは天文部で、篝火はバードウォッチング同好会だった。サークル間は隣同士で仲が良かったから、2人も自然と仲良くなった。相性が良かったのだ。
付き合い始めて、2人はサークルに行かなくなった。何が楽しいかと言われたらはっきり言えないが、2人ともサークルよりも楽しいかと何かを見つけたのだ。相性が良かったのだ。
篝火はある日髪を切った。ベリーショートというやつらしい。篝火はスレンダーで、キレイ系の美人というやつらしいからなのか、髪が長かった時よりも女らしくなった気がする。
篝火がベリーショートになって、2人のsexの回数が増え始めた頃、篝火はタカシに言った。
「結婚しよう。」タカシはうまく答えられなかったが、篝火は大学を卒業するまでに答えてくれればよいと先に言った。その日は二人して朝から晩まで大学に行かず、大学生らしい遊びに耽った。相性が良かったのだ。
その頃から、タカシは肥り始めた。タカシが篝火のマンションに行くよりも篝火がタカシのアパートに来る方が多くなった。sexの頻度や質は落ちなかった。2人は相性が良かったのだ。
大学三年の冬、2人は同じ研究室に入った。もはや2人は公認のカップルだった。飲み会で先輩達に冷やかされ、タカシは洗礼として酒をガンガン飲まされた。篝火は心配だった。心配でしょうがなかった。タカシはお酒が強くないのに。
次の日、タカシは熱を出した。タカシは柔らかなお腹をふうふう上下させて、苦しんでいた。篝火はタカシの熱を分け合いたかった。篝火はタカシを愛していた。タカシに美味しいものを食べさせて、タカシとなるべく一緒にいようとした。タカシが寝ているとき、篝火はタカシの側でタカシを見守り続けた。タカシの熱は二日経ちようやく下がった。
タカシは夜目を覚ました。熱が引いたようで、ダルさがない。明日のゼミは出られそうだ。
ふと何かの重みを感じ、体を起こす。篝火が何も掛けず、タカシの腹の上で眠っていた。普段口うるさい篝火は寝ると寝息もたてない。タカシは篝火のベリーショートの髪を撫でてみた。ポニーテールの方が良かったのに。篝火の頭は小さくて可愛らしかった。寝惚ける篝火に布団をかけ、枕を敷きベットに眠らせた。
ベランダに出て、タカシはタバコに火をつけた。篝火に禁煙させられたのは、去年の春だ。煙は月明かりに溶けてとても青かった。タカシは2本目のタバコに火をつけずにくわえて、暫くして決心した。
「篝火と結婚する。」
2本目のタバコには火をつけずに篝火の横で寝た。
2人は相性が良くて悪いのだ。
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