オモテの続き　H奈さん・・・over　dose（オーバードース）

Ａ代表は続けて話した。「ゆりさん、私が聞いたのは会員のＩ坂という人からだ。その人はＨ奈さんと仲が良くて時々団体本部にも一緒に来ていた。Ｉ坂さんはしばらくＨ奈さんと会っていないからどうしているかな？と携帯電話にかけてみたけど何回かけても留守で折り返し電話も来なくて、気になって自宅のほうに電話したら・・・」

私はドキドキしながらＡ代表の言葉を待った。

「Ｈ奈さんのお母さんが出られて、彼女は薬を飲みすぎて亡くなったと伝えられたそうなんだ」とＡ代表は静かな声でそう言った。

私はドキドキ感を抑えながら聞いた。「Ａ代表、そのＩ坂さんという人は嘘やいいかげんなことを言う人じゃないですね？不安定で、現実と妄想が区別つかない人とかでは・・・」


Ａ代表は静かに首を横に振りながら答えた。「Ｉ坂さんはごく普通の人だよ。精神状態も安定しているし、そんな嘘を言う人じゃない」。

Ａ代表は目を閉じて静かに話した。「ゆりさん、残念なことだよね。彼女は『私も人の助けになるんだ。かつて私が助けられたようにね＾＾』とよく言っていた。でも結局は、精神病で苦しみ続けた短い生涯になってしまった」



帰り道、私はH奈さんを思い起こしてみた。遂に会うことはなかったな。面識があったらもっと哀しかっただろうから会わなくてよかったのかな、いや、そんな思いは私のエゴ、それはどうでもいい。

H奈さん・・・
関係者の方々から聞く話によると、海外で生まれ育ち、中学生の頃に戻ってきた帰国子女。日本や学校に馴染めずリストカットを繰りかえすなかでかつてのA+B団体に入会。会で出会った人達に希望を与えられリストカットも治まり前向きな生活を送っていたらしい。しかし、会のなかの親しい人達が恐喝・暴行障害事件を起こし、冤罪だと信じていたのに事実らしいとわかりショックから首吊り自殺未遂。命は取りとめたが脳に障害が残り、リストカットが復活し、調子が悪くなると現実と妄想との区別がつかなくなって言動がおかしくなる。


数年前にA団体とB団体に別れてからB団体に入会を申し込むも、B団体役員から「貴女のようなお荷物をかかえたくない」と拒否され、A団体を訪れ暖かく迎えられたため入会。


私とはメッセやチャットで話したことが何度もある。調子のいいときの彼女はごく普通の女性のようである。「ゆりさん、A団体のハイキングに行く？私行くんだ。会いたいな＾＾」「ゆりさん、本部で腕をふるってお料理したんだ＾＾。チャーハンは好評だったよ」と、特に何もないんじゃないの？という雰囲気である。


しかし、安定剤を常時多量に飲んでいて、その影響かもとの精神状態のせいか、時々おかしくなっていた。
自分でブランド服を売ってお金をA団体に寄付しているのに、警察に「A団体からお金を出せと脅迫された」と通報し、その日の夕方に取り消しに行ったり、出会い系サイトで多数の人に「A団体の勉強会にきませんか？」と勧誘メッセを出したり、その行為を自分で勝手にやったにも関わらず「A代表に指示された」とA団体HPに投稿したり。

それも嘘ではなく、その時点では彼女の中で「本当の事」になっているのだから困ったもの。

H奈さんは「私はかつてA+B団体の人に救ってもらった。今度は私がする番。私も人を救済するんだ。A代表も『心の傷が理解できる貴女は誰かの心の傷を癒すこともできる人だ』と言ってくれた。私ができる事もあるはず＾＾」と私とのメッセでも書いていた。

彼女は恋人が短期間でどんどん変わったらしい。ミュージシャンと婚約したが破棄、その後すぐ別の男性と交際してまた別れ、出会い系サイトで出会った人と婚約し結婚式の予定まで立てていた模様（この間、なんと2ヶ月程度（＠＠））

彼女のことをよく知っているA団体東京会員の人たちも「H奈さんは、精神状態が不安定だから恋愛と別れを短期間で繰り返すのか、そんな恋愛ばかりしているから精神状態がおかしくなるのか、鶏が先か卵が先か？みたいなもんかな」と言っていたな。

精神科に入退院を繰り返していたらしい。リスカも続いていたらしい。
心の病に苦しみ続けた短い人生だったんだと思うと涙が浮かんできた。


あらためてH奈さんのご冥福をお祈りします。
合掌