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ウチュウジン ~4~

2011年10月12日 20:37

「この前のデートで」

私は、グラスをコトリと置いた。

「なんか張り切ってるなって思ったら、

これだよ。

いきなりでビックリしちゃった」

「ふーん」

彼はゆらゆらとグラスを揺らしてた。

「で、何て返事したの?」

「OKした」

「だろうね」

「でもね」

「うん」

「『はい』って口にした瞬間、

急にその『はい』を取り消したくなっちゃった。」

「なんで?」

「わかんないのよ」

私は、頬杖をついて、息を吐いた。

プロポーズって、もっと嬉しいものだと思ってた」

「嬉しくなかったの?」

「嬉しかったわよ。

でも、嬉しさよりも、

取り返しがつかないことを言っちゃった気がして、

すごく怖くなった」

「取り返しのつかないこと、かぁ・・・」

「そう、取り返しのつかないこと。

本当にこの人と一生生きていけるんだろうか、って。

キライとかそういうのじゃないのよ?

好きだから付き合ってるんだし。

でも、なんだか、

こんな重要なことを

言われたその場で決めちゃって良かったのかなって」

「そっかぁ」

トオルは一口ビールを飲んだ。



少しの間、沈黙が流れた。

トオルの方を見ると、目が合った。

と思ったけれど、彼の視線は私を突き抜けて、

どこか遠くを見ていた。

その瞳の光の揺れを見ていると、

彼の1メートル圏内にいるのにも関わらず、

どこか知らない雑踏の中に取り残されてしまった気がして、

心がざわついた。



「ねえ、どう思う?」

私が堪らず聞くと、

トオルは私と目を合わせて聞き返した。

「どう思うって?」

「私、ヤマトと一緒になっていいのかなあ?」

「なっていいとか悪いとかじゃなくて、

なりたいかなりたくないかだよ」

「そうだけど・・・」

「好きなんだろ?ヤマトのこと」

「じゃあいいじゃん」

「そうだよね・・・」

「うん」


ヤマトが残りのビールを飲み干して、

にこりと笑った。

「お腹空いたし、パイ食べようよ」

このウラログへのコメント

  • ろんろん 2011年10月12日 22:41

    ヤマトと不倫の予感。。。

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