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ウチュウジン ~3~

2011年10月05日 19:43

カンパイをして、それぞれが一口飲み物を飲んで、

二人して小さくため息をついた。

何の気なく、

カルアミルクの氷をからからと回す。




「ねぇ、サキさんはなんでそんなにいつも怒るの??」

「さあねぇ」

グラスにできたギネスの泡の輪を見つめながら、

トオルは少し考えた。

「たぶんね、僕があまりにも自由すぎるんだと思う」

「でも、他の誰かと浮気するとか、

そういうわけではないんでしょう?」

「うん・・・、そういうわけではない」

「この前も電話で話したけど、

俺ってさ、基本的にゆっくりにしか動かないし、

自分で勝手に行動しちゃうんだ。

こうしたいって思ったら、サキがどう思うかとか、

そんなこと考えずにやっちゃうんだ」

「一言相談すれば済むことなのに」

「頭では分かってるんだよ。

でも、言ってその後色々言われるのが嫌なんだ」

「分かるけど」

「そういうわがままな男なんだよ」

「誰だってそういうところあるよ」

「俺の場合、その領域が広いのかも」

「ふーん」



二人はまたカルアミルクギネスビールを一口飲んだ。

「それに、俺たちはどこか、

相手の触ってはいけない部分を、

いつも触ってしまうんだ」

「触ってはいけない部分」

「そう、触ってはいけない部分。

友達の時はそうでなくても、

恋人関係になると、距離がグッと近くなる。

今まで話さなかったことも話すようになるし、

相手の色んな部分がどんどん見えてくる。

それでも、侵してはいけないポイントは誰にでもある。

そうして、サキと俺の場合、

自分を通そうとすると、

相手のそのポイントを踏まざるをえなくなるんだ。」

「なるほど」

「だから、しょっちゅう喧嘩になるわけ」

「嫌にならないの?」

「なるよ。

だから、何回も別れた」

「でも、すぐに戻ってるじゃない。

決定的に嫌になって別れる、なんてことはしないでしょ?」

「そうなんだよね。

どんなにしんどくても、

離れてしまうと、寂しくなるんだ。

それで、サキのことが好きだったんだって思う。

それで、戻る。

逆も然り」

「結局好きなんだ」

「多分ね」

結婚はしないの?」

「向こうはしたいって思ってるみたい」

へぇ!」

「でも、俺にはどうすべきか分からないんだ」

「なんで?」

サキといると、たまに、

これでいいのかな、って疑問に思ってしまう。

恋愛はできても、

結婚生活はそう簡単にはいかないと思っちゃうんだよ」

「そりゃ簡単じゃないだろうけど・・・」

「それに、俺はなんとなく抵抗したい感覚に襲われるんだ」

「何に?」

彼女に。

彼女の強力な吸引力に抵抗しないと、

俺は知らない間に、

自分が行きたいと思ってる方向とは全く別の方向へ

言ってしまうような気がする」

「どういうこと?」

「それくらい、

彼女の求めるものと俺の求めるものが

違うってこと」

「よくそれで6年間も付き合ってこれてるよね」

「俺も不思議」

トオルは少し笑って、ビールを一口飲んだ。

「そっかぁ・・・」

私は、カウンターに頬杖をついて遠くを眺めた。

結婚って、どうやって決めたらいいんだろうね」

「相手に何を求めるか、だよ」

「そうなんだけどね・・・」

ヤマトとはそんな話になる?」

「なった」

「え?」

プロポーズされた」

私は、からからとグラスの氷を回した。

このウラログへのコメント

  • りょうじ 2011年10月05日 20:45

    はじめまして。面白いです!!

  • ろんろん 2011年10月06日 00:05

    急展開!!次回期待^^ 花火送ったよ~

  • ゆきんこ555 2011年10月06日 20:19

    りょうじさん>> ありがとうございます☆これからも読んでもらえれば嬉しいです!

    ろんろんさん>> ありがとうございます☆感想は気長に待っていてください(汗)

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