- 名前
- 吟遊詩人
- 性別
- ♂
- 年齢
- 71歳
- 住所
- 東京
- 自己紹介
- 貴方が厳しい社会や東京に振り回され、耐え難い寂しさや孤独感、性欲に苛まれた時、また出...
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アイへの手紙
2010年05月20日 10:37
アイへの手紙
昨日、いつもの店であいつ(大野)に合った。君からの手紙だと受け取ったよ。
アイ。俺の心をかき乱さないでくれよ。
手紙の最後にあるお前の唇の痕とその深紅の色は、二人の秘密の口紅だろう。
忘れるものか。忘れようとしても忘れられないよ。
二人で過ごした全ての時間が心に蘇り、お前と別れてからもう10年だろう。
一生懸命忘れようとしてきた10年間の全てが、お前の口紅の印で消えてなくなったしまった。
おれの心をかき乱さないでくれ。
お前も俺のことは風の便りで知っているだろう。今の俺には妻も8歳と3歳の子供もいることを。
悪かったのは俺だけど、俺が口が悪いのは知っていただろし、俺が上手いことも言えないのもわかっていただろうに。
なぜ俺の些細な言葉が、それほど許せないのか、正直いって今でも判らない。
口で上手く気持ちを言えなくても、俺がお前を愛していたことは、お前もわかっているだろうと思っていた。
俺の愛し方も、二人で過ごした時間の全てが俺たちの全部を示しているから、きっとわかってくれていると思っていた。
お前の手紙にあったように、確かに俺がお前に深紅の口紅をさしてあげたんだけど、その口でお前が俺のを咥えて愛してくれたんだし、その時のお前が綺麗だったこと今でも思い出すときがある。
お前がくれた時間の一瞬一瞬も、その幸せの全部も俺は忘れてはいない。
その日は、お前の親戚の法事だったかで、お前の帰りが遅くって俺はお前の部屋にい続ける事もできずに、駅前で飲みながらお前の帰りをまっていたんだ。
それで俺は機嫌がわるくなっていたし、お前は疲れて帰ってきて、喧嘩になったんだ。
そのあと仲直りしたんだろ。そのことも覚えている。
口紅をさしてあげたのはその日さ。
口下手な俺だけど、俺のを咥えて、飴玉を頬に入れたようなお前の顔をなでて、素直に綺麗だと言えたし、愛しているとも言えたし、セクシーだとも女ポイ・・とか他の気持ちも伝えたはずじゃないか。
その一瞬一瞬のこと(行為)は、お前は忘れているんだ。俺は忘れてはいないし、忘れられない。
お前の手紙にあったように、俺も今の家庭を大切にしたいし、子どもも妻も愛しているよ。
でもお前と同じように、俺も、お前のことは消そうとしても消えないし、忘れてはいけない大切なことも幾つもあったと思っている。
それに体と心に刻み込まれた時間の痕跡は消そうと思っても消せないし、いくら忘れようとがんばっても無駄な抵抗だとも判っている。
あのとき別れたことは二人の失敗だったたんだよ。
若かったから男女の体や愛がこんなものだとは知らなかったし、お互いこの歳になってわかってきたことでもあるんだろうよ。
とくに最近、なんだか俺も布団の中で涙がでることがあるよ。
もう元には戻れないけど、そんなことの全部判ってくれているなら、大野が俺たちのことを忘れたころ、噂が消えてみんなが忘れたころに、
そうだな6ヵ月ぐらい後になっても、お前がそれでも俺のことを思ってくれているなら、そっと連絡してくれ。
携帯番号は〇〇〇〇〇〇だから。
判ってくれるだろうけど、十分注意してくれ。ずるく悪いことは知っているけど、そうして俺らしくいつものようにはっきり言うけど、大野に誘われても店にはくるなよ、あと連絡する時は男の名前にしてくれ、アイの字を入れてくれれば6ヵ月後でも俺にはお前だとわかるから。
それでいいな。
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