幸福の向こう側…６

あれから…


九州に行ったっきり
ヒロとは全く連絡が取れなかった…
もちろん広瀬さんとも…



今までこんな事はなかった…



NYに行っても一ヶ月に一度は手紙をくれたし

３ヶ月も連絡ないなんて
ヒロと出会ってから十数年一度もなかった…


広瀬さんの実家も
結婚式の時に広瀬さんの着替えで寄っただけで
あまり覚えてはいない…


なんかあれば連絡くれるだろ…けど…


心配で…


心配でどうしようもなかった…


でも…
ヒロと広瀬さんに任された今の仕事を疎かには出来ない


この仕事が終わったら
九州に行ってみよう


そう思いながら
仕事を続けた…



それから約3ヶ月…

何とか仕事も一段落し
ようやく時間が出来た



横浜のヒロと広瀬さんのマンションに行ってみてもずっと帰ってない様子…



やっぱりまだ九州にいるんだ…



僕はすぐに自宅に戻り荷造りをして
その足で羽田空港に向かった…



３年以上も前の記憶を頼りに広瀬さんの実家を探した…


広瀬さんの実家が資産家で大きな家だったこともあり、見つけるのはそう難しくもなかった…



実家について呼び鈴を鳴らす…



が…



返事がない…



その日一日
近くの喫茶店で待って
何度か訪ねたけれど
誰もいない様子…


近くのホテルにチェックインしてから


夜…
もう一度…
実家に行って見ると…



家に明かりがついていて玄関先にタクシーが止まっていた…



誰か
戻ったんだ！

急いで
呼び鈴を押そうとしたら…



急ぎ足で広瀬さんの妹が玄関から出てきた…



すいません！
突然なんですが

僕は東京で広瀬さんの友達で…
一緒に仕事をしているものなんですが…
広瀬さんはご在宅でしょうか？



あっ！
えっと…


確か結婚式の時にいらした方ですよね？

シュウジさん！



そ…そうです！



お久しぶりです！
突然すいません！



いえいえ
大丈夫ですよ…


あのぉ…
広瀬さんは？



…………

兄は…

兄は今病院にいます…



えっ！？
まだ入院されてるんですか？



そ…そうなんです…



自転車で転んで骨折したとは言っていたけれど…>
それでももう
幾らなんでも３ヶ月以上たっているのに…
まだ入院してる？？？
どういうことなんだろうと思いつつ

まぁでも入院してるんだから大事には至らなかったんだと
少し安心した…



どこの病院ですか？
せっかくなのでお見舞いに行きたいんですが…



あ…はい…
でも…



妹さんの言葉が詰まった…



広瀬さん結構大怪我されたんですか？
大丈夫なんですか？
自転車で転んだだけだと聞いているんですが？



そ…そうです
だ…大丈夫は大丈夫なんですが…



嫌な予感がした…
なんか隠してる…



会う事は出来るんですか？


は…はい


今着替えを取りに戻ったところなんです
これから又病院に行くところです


一緒に…
行きますか？



はい！
是非！



広瀬さんの妹と二人で
待たせてあったタクシーに乗り込んだ…


あの…
ヒロは…いや広瀬さんの奥さんはいますか？



あ…はい
今病院にいます



よかった…
元気にしてるんだ…



なんだか…


これ以上広瀬さんの事を聞けなかった…

妹さんもそれ以上は話さない…



今からお見舞いに行くんだから
いいや…
と…
タクシーの中では無言でいた




大きな病院だった…



もう夜だったので
メインの入り口ではなく夜間の出入り口にタクシーをつけてもらった



入り口の横にある
赤い
「救急」のランプがやけに眩しかった…

どきどきしながら
妹さんに着いていくと…



ミ…ミサキ！！


待合室の出入り口を元気に走り回っていた…



ミサキ！！
シュウちゃんだよ！！



３ヶ月以上も会わなかったけれど…
いつも一緒に遊んでいたので、僕の事ははっきりと覚えていてくれたらしく

笑顔になって走ってきた



久しぶり～
元気だったか～～


その途端…


頭をなでなで…



されたのは僕…



いつもヒロがやるから真似をする…



そうだ…ヒロ

ママはいるの？



手を引っ張って
待合室に連れて行かれた



広い待合室の真ん中に…
ヒロはいた


目を真っ赤に腫らして…
目の下にクマを作って…

やつれた顔をして…



ヒロ！！




呼んでも気づかない…

おい！
ヒロ！！




ゆっくりと顔を上げて僕のほうを見た…


ヒロ！
大丈夫か！！
全然連絡くれないから心配して来ちゃったよ～

一体どうしたんだよ～
広瀬さんは？
どこ？
何号室？



そう話しているうちに…
僕に駆け寄って来て…

僕の胸に顔を埋めた…

ヒロの目から涙が零れ落ちていた…



シュウジ…
やっぱり来てくれたんだね…
ありがと…


逢いたかった…




連絡出来なくて…

ごめんね…
いっぱいありすぎて…


ボロボロと涙を流しながら…


ヒロは話し続けた…



タクちゃん…
元気だよ…



良かった！
でも…
なんでまだ入院してるの？



うん…
上手く…
説明出来ないんだ…

だから連絡出来なかったんだ…
ホントにごめんね…
心配かけて…


この時間だと…
もう寝てるから…
明日…



あっ…うぅん
でも…
今日…
顔だけでも見て行って…


その方がいいから…


私とミサキは
近くにマンション借りてもらってそこにいるから…


明日また来てあげて…
会わせるから…


タクちゃん薬飲んでるから…
今日はもう起きないから…



うん…
わかった…



その方が良い…って言われたのが少し引っ掛かったけど…
その時は余り気にしなかった…


病室に行って…
寝ている…

広瀬さんを見舞った…



なんかあって…
沢山の機器が繋がれているでもなく…
とくに変わった様子もなかった…



元気そうだね…



って言って…

ヒロを見たら…



広瀬さんの穏やかな寝顔を見つめながら…
また…
ボロボロと涙を流している…



どうしたの？
元気そうじゃん！
怪我もしてないし…



うん…
凄く元気なの…


でも…

もう…

シュウジが知っている…
タクちゃんじゃないの…




えっ？
足…怪我して歩けないとか？



うぅん…

起きてる時は…
たまに中庭とかでバスケして…

少しだけだけど…

ミサキと一緒に遊んでくれる…



何がなんだか
良くわからなかった…



次の日に…




会うまでは…