- 名前
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- 50歳
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- 奈良
- 自己紹介
- 「元」がつきますが一応プロの小説家。現在、 カムバック目指して修行中です。 そんな私...
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「女性が苦しむ姿」の魅力について。
2016年12月24日 21:23
女性が苦しむ姿。
良いものです。魅力的です。人を惹きつけます。
少なくとも、男性のそれなんかと比べたら、遥かに。
☆ ☆ ☆ ☆
涙が止まらず、鼻水なのか逆流した胃液なのかわからないものを
全て垂れ流しにしながら、彼女は何度も吐いた。泣いているのか笑っているのかも、
もはやわからない。
浮かんでくるのは、この屋敷で過ごした昨日までの記憶だけだ。
……妾(わらわ)だ。妾が悪いんだ。
妾がマティアスを死地に追いやった。妾が殺した。
変わり果てたマティアスに触れる。乾いているが、温かだった肌は冷たく固い。
マティアスの匂いよりも、血と腐臭の方が濃い。
☆ ☆ ☆ ☆
……はい。
「鉄球姫エミリー」という作品です。
まず、ですね。
表紙を開いて最初に目に入る扉絵が、画像の右側です。
いきなりこれを見れば当然、
「おぉ可愛い! 綺麗! そんでもってエロい、お姫様っ♪」
なんて思うわけですよ。
ところが。
そう思ったその扉絵の、その本を読み進めていって、
出くわすのが上記の引用文と、画像左側の挿絵。
この作品では。
主人公であるエミリーが、正に本物の「お姫様」ですので。
私がよく言う比喩表現ではなく、モロに本当に、
「お姫様を守る騎士たち」がいます。可愛いメイド服の侍女たちもいます。
姫様を守護する歴戦の英雄、「『盾』のマティアス」もその一人。
その、彼ら彼女らが、続々と無残な死を遂げていきます。
そして生き残ったエミリーが、泣いて泣いて泣いて泣いて苦しみます。
私なんか、この作品を読んでて、
「いや、いくら何でも、この人は死なないよね? ちゃんと助けが来るよね?」
とか思ってるところに容赦なくザックリ、で。
「……そんな……」
と思わず声を出したその口が、開いた状態で固まってしまって、そのまま
目ん玉だけ動かして文章を追ってる姿は、
ハタから見ればさぞブキミであったことでしょう。
それでも。いや、それほどまでに。
読むのをやめられない。強く惹きつけられてしまう。
思うにですね。
「マッチ売りの少女」「おしん」「小公女セーラ」など、
メジャーどころを見れば一目瞭然。
女性が苦しむ姿というのは、魅力的なのですよ。
例えば。
セーラが、最初から最後までダイヤモンドプリンセスであれば、どうか?
彼女の人格がそのままであれば、貧しい人たちに施したりはするでしょう。
しかし、その姿は。
ミンチン先生に虐められて屋根裏で貧困に耐える姿と比べて、どうか?
どちらが感動的、というか、「どちらがヒロインとして魅力的」か?
逆境にあっても捻くれることなく、優しい心を持ち続ける少女……
というのは、その逆境があるからこそ、出せる魅力です。
ここで。
良い比較対象になるのが、「小公子セディ」。
こっちは正に、今言った通りの、逆パターンセーラ。金持ちのままです。
逆境がゼロとは言いませんが、セーラとは比較になりません。
https://www.youtube.com/watch?v=qJ5iK-PfmuE
https://www.youtube.com/watch?v=v5utszJ7ySQ
どーです。この、雰囲気の違い。
歌詞の内容を吟味するまでもなく、前奏を数秒聴けばお解り頂けるかと。
セーラとセディ。小公女と小公子。
性別を変えただけで、主人公の境遇は天と地。
作品の方向性もガラリと変わってます。
セーラほどではないにしろ、「若草物語」の四姉妹もそれなりに苦労してます。
でも「トム・ソーヤーの冒険」のトムは楽しく遊んでますよね。
「おしん」の男性版なんか、どこにもありません。
少なくとも「おしん」クラスのメジャーどころでは。
貧困に苦しむ子供、というのは男女両方いるはずなのに、です。
(偉人の伝記なんかだと、少年時代は貧乏だったというのが定番ですが、
それはただ貧乏なだけですしね。「悲劇的展開」とは、ちと違う。
後に逆転することがわかってる、ヒーローのピンチシーンみたいなもの)
つまり。
おしんとセーラが示しているように、世界的な傾向として。
男性を虐めても、男性が辛く苦しい悲劇に耐えても、魅力は出ない。
だから。
「マッチ売りの少年」はおらず、いるとしたら
「ヘンゼルとグレーテル」や「安寿と厨子王」のように、
男女ペアの場合。ああ、犬とペアなんてのもありましたな。
貧困や虐待、愛する人の死、あるいは
家族の残した借金、色恋沙汰のもつれ、などなど。
世界名作劇場から、サスペンスドラマの悲劇的動機まで、
全てに共通して。
なんであれ、「苦しむ姿」が魅力的であり、
その魅力が作品の看板とまで成り得るのは、やはり女性。
悲しみ、悩み、それらに耐え、頑張る姿が、美しいのです。
まあ、男性が苦しむ姿はですね。
少年漫画や特撮で、強い敵と戦って傷だらけで苦戦してる時!
に、需要がありますから。
(女性のそれを真剣に濃厚にやるのは、事実上無理ですし……)
男女の魅力の、性質の違い。ということでしょう。
ほんでまぁその。
今回のこういうタイトルで、裏っぽい話題にはならず、
でもあーだこーだと力説してるところが、私の芸風というか個性というか。
そんなもんだとご理解下されぃ。ってなわけで、来年もよろしくです。
☆☆名作紹介☆☆
「鉄球姫エミリー」は、本っっ当に、
エミリーが希望を見つけて健気に前を向くたびに、
次から次へと新しい悲劇に襲われて苦しむ、という内容なのですが。
二巻からは。
傷つきながらも、踏ん張って戦い続ける、少年騎士が登場します。
そして。
最終巻、最終話、エピローグ、最後の最後はこう結ばれています。
(一応ネタバレ注意)
☆ ☆ ☆ ☆
後のラゲーネン王国史において
第二ラングリッジ王朝と呼ばれる時代が幕を開ける。
その初代女王『鉄球王』エミリーの傍らには、
常に『盾』の名を持つ重騎士の姿があった。
☆ ☆ ☆ ☆
そう。
あの、マティアスの名を、少年が継いで。
マティアスが命懸けで護った姫様を、
深い絶望から立ち上がってきたエミリーを、
護り支えていくのです。
……あぁ。うん。はぅ。
やはり、良いものです。
騎士とお姫様は。
このデジログへのコメント
ああ、目からウロコ。
そうなの?!!
そうなのか~と
思いながら納得する自分がいました。裏的に。
えぇこと聞いた♪
次回からのログは
お涙頂戴の内容にしよう
よし!
これで私もモッテモテだわ♡
merryXmas
メリクリでーす(^o^)
幸福の王子とか
ベルセルクあたりは
苦悩する男子萌えに
該当しませんでしょうか
殿方の悩む姿も
セクシーでよろしおす(≧∇≦)
その苦しみから悩みもがいて、試行錯誤
して、何とか希望の光を見い出す。。
なんか、自分を置き換えてしまうから
ダメですねえ
゚+.・*。+(。・∀・。)*.゚+。・メリクリ☆
> 木綿子さん
ふふ。私の裏の、2014.11.15ですな。苦しむ顔、乱れる息、絶え絶えな声、は
女性でこそ美しいが男性のそれは……と。表なのでここまで。
その辺り、貴女とは一致してて嬉しいですぞ。
> みつはさん
男性から女性に向ける好意の源泉の代表的なものとして、「守ってあげたくなる」が
ありますからね。私のログ同様(えへん)、ウソでさえなければ、
素直に魅力として成立すると思いますぞ。
> 椿さん
その二作品は未読御免。名作劇場では「ロミオの青い空」というのが少年の苦悩もので、
私の妹が大好きだったのですが……やはり、セーラやおしんとは知名度の差が。
希少価値、という見方もあり。
> はぎんちょさん
おおっ。感受性が鋭い。人格が素直であればこそ、物語が心に染み込んで、
登場人物の悲しみや喜びがダイレクトに響くというもの。
小説や漫画や映画を、きっと人より多く楽しめてますよ。
逆境の中でも挫けず、見た目も心も美しいヒロインというのは魅力的ですね
以前、猫にひっかかれて、
赤い筋が数本走る首筋の痛々しい画像をウラにあげたら
いつもより大量の足跡がついたのを思い出しました
> eriさん
うおお。聞くだけで痛そう。怖いもの見たさ、というか痛々しいもの見たさ、ですねそれは。
疲労の息切れ、苦痛の喘ぎ、などの音声も、色っぽく美しい。
女性の魅力は幅広く奥深いです。
フランダースの犬とか母を訪ねてなんかは、男が苦しむ物語のような気もするけど、古来より女性が苦しみ最後は幸せになる物語が多いですよねー。
セーラは初恋の相手といっても過言ではないなぁw
> とめをさん
中学生の時、英語の教材のカセットテープで、案内役を島本須美さんがやっておりまして。
冒頭で、セーラとナウシカのセリフをちょこっと披露してくれてました。笑えましたよ~。
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