- 名前
- あにす
- 性別
- ♀
- 年齢
- 53歳
- 住所
- 埼玉
- 自己紹介
- 猫を飼っているけど、犬派。 パグや、フレンチブルが好き。 コーヒーよりも紅茶を良く飲...
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サビ猫の白い影
2016年03月02日 16:24
昨日、夕食の支度を終えた後
立っていられないほどの眠気に襲われて
そのまま眠ってしまった。
珍しく、ストーリー仕立ての夢を見る。
遠くに聞こえていた救急車のサイレンが
どんどん近づいて、我が家の横で止まった。
ご近所に、一人暮らしをされているご老人がいる。
その方に、何かあったのかもしれない。
起きなくちゃ。
ところが、こんな時に金縛りが。
指一本でも動かせば、金縛りは解けるはず。
急いで金縛りを解かなくちゃ、と指先に神経を集中していると
誰かが私の枕元で、ヒソヒソと話をしている。
「ダメですね」
「動きませんね」
目線を動かして、声の主を確かめようとした途端
ふっと、私の顔の上に布が置かれた。
この顔の布って
死んじゃったのは、私?
救急車は私のために呼ばれていた?
大変!
早く動かなきゃ、指を動かさなくちゃ。
死んだことにされちゃう・・・
もしかして、もう死んでるのかも・・・
それなら、諦めなくちゃ・・・
半泣きで目が覚めると
顔の上に、タオルはあった。
けれども、私の周囲には人はおろか
救急車の気配もない。
そして、飼い猫と目が合う。
枕の上に、どっかと座り込んで
人の顔を覗き込みながら
大丈夫ですか?って白々しい演技をしている。
お前の仕業かよ!
腹が立って、タオルを放り投げる。
我が家の猫、靴下やら下着やらタオルやら
くわえやすいモノを洗濯物から探してくわえると
発情期の猫が出すような雄たけびをあげて
飼い主の足元に持ってくる。
猫サイレンが近寄ってくると
何を持って来るんだかと、うんざりだ。
今回その獲物を、私の目の前に落とそうとして
顔にタオルが乗ってしまったらしい。
ふざけるな。
私が小学校低学年の頃。
全身がほぼ真っ白で、きれいな子猫を
同じアパートの上級生たちが抱いていた。
野良猫なのだろうが、とても人懐こい様子で
みんなが順番に抱っこしていた。
金曜日の放課後、時間はたっぷりとあった。
一番年齢が下だった私に順番が回ってきた時には
もうみんなが、家に帰る時間になっていて
つまり私は、押し付けられる形になってしまった。
猫をどうすればいいのか分からず
時々、高い声で鳴く猫を抱いたまま
自転車置き場の裏で、半べそをかきながら隠れていた。
親に見つかったが、猫を地面に置いても追いかけてくるので
親は、自転車置き場の裏で、猫に少しのエサをあげた。
猫がエサを食べている間に、逃げるようにして帰ったのだ。
それから子猫はずっと、同じ場所で鳴き続けていた。
人が通ると、駆け寄ってくる白猫は
シッ、シッと、蹴られるように追い払われる。
私はベランダから、何度もそんな光景を見て
ただ、メソメソ泣いていた。
最後に見たのは、月曜日の朝。
雨が降っていた。
登校班で、並んで学校へ行く時に
猫は鳴きながら、私たちを追いかけてきた。
そして、誰も抱き上げてくれないと分かると
いつの間にか、ついてくるのをやめてしまった。
猫の鳴き声も、その日から止んだ。
学校から帰って、自転車置き場の裏を見ても
駐車場の車の陰を一つずつ探しても
猫の姿はなかった。
私は、子猫に酷いことをしてしまったことを
初めて、自覚した。
あの猫が、誰かに拾われて幸せになったと
どうしても考えられない。
人を呪い、野良猫として不幸な一生を送ったのではないか。
もしかしたら、あの雨の中で風邪をひいて
すぐに死んでしまったのではないか。
私は、あの白い猫を思い出すと、重い気持ちになる。
あの時、もう少し頭を働かせて行動すれば
何とかしてやれたかもしれない。
そういう考えもなく、飼える環境でもないのに
一時の可愛いだけで動いてしまった自分を
今でも悔やんでいる。
何かの拍子で、思い出す白猫は
悲しげな声で、私をせめている。
我が家にいる猫は、何の事情があったのか
近所の駐車場に落ちていた。
犬が散歩の途中で見つけて、鼻を寄せた途端に
キーキーと鳴き始めたので、犬と一緒に驚いた。
キーホルダーについている、小さなぬいぐるみに見えて
まさか生きた猫だとは思わなかった。
何とかしようと連れ帰ったけれど
あまりの小ささに、すぐに死んでしまうのではと
嫌な予感がした。
幸か不幸か、猫は無事に育った。
今は犬もいなくなり、猫一匹が自由に過ごしている。
猫のくせに、トイレを覚えない。
未だに、部屋の隅っこや洗面台で粗相する。
粗相ついでに、お風呂場や洗面所の蛇口をいじるから
水が出っぱなしになる。
意味不明なテンションで人に飛びかかってきて
噛みついてきたり、引っかいてきたり。
いつだったかは、押入れの天袋から飛び降りてきた猫に
旦那は思いっきり爪を立てられて、頬をザックリ切った。
目をやられなかったのは、本当に運が良かった。
興奮して走り回っている奴に、
カップやお皿を、いくつ割られたか。
壁紙は、爪とぎでボロボロにされ
椅子のクッション部分たるや、見るも無残だ。
虫を部屋に持ち込んでくる。
たたんだ洗濯物を荒らすのは、日常茶飯事。
そのくせ、調子よく甘えてくる。
この調子のよさ!
ますます猫嫌いが加速した。
それでも、この猫に迷惑を掛けられて
片付けをしたり、後始末をしたりすると
似ても似つかない、あの白猫を思い出すことがある。
我が家のサビ猫。
今日は暖かさから、庭先で居眠りをしていた。
警戒感ゼロの姿で眠る姿は
幸せそうで何よりと、皮肉交じりに思う。
あの白猫が、少しでも穏やかな時間を過ごせていたら
救われるのだけれど、それを確かめる術もない。
「ダメですね」
「動きませんね」
白猫は、誰に気づかれることもなく
いつの間にか死に襲われていたのではないだろうか。
今日は、そればかり思い出して、憂鬱になる。
古傷が疼くような思い出。
いつまでもサビ猫に、白い影がちらつく。
このデジログへのコメント
なかなか巧いね
> julianさん
しょうがないで済ませられる方は、多分ネコ派でしょうw
でも自分がなれるなら、やはりネコがいいです。
飼い主がいない犬ほど、不憫なものはいませんから
独立独歩のネコがいいですね。
> sa_toさん
安易な可愛いや可愛そうが、どれだけ酷いかは
嫌と言うほど分かりましたね。
良い勉強というには、暗すぎる思い出です。
> RyuTaさん
びっくり下谷の広徳寺、畏れ入谷の鬼子母神!
ありがとうございます!!
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