親子

百貨店で5歳くらいの男の子を2人連れた親子がいた。子供はオモチャ売場の前から動かない。お母さんはすごい形相で睨みつけている。

お母さんは「来ないなら置いていくよ！」「いい加減にしな、早く来なさい！！」と腕を無理やり引っ張っても男の子は微動だにしない。ついに、男の子は泣き出した。百貨店のなかとはいえ、子供の泣き声はかなり響く。気がついたらギャラリーの輪ができていた。

お母さんはとうとうぶち切れて「いい加減にしなさい！」と子供2人を平手打ちにする。それを見ていた誰もが驚いた。ギャラリーの何名かが、スマホを取り出して「これは虐待だね！警察に通報しよう」「ネットにアップしようか！」と声が聞こえてくる。

そこに、他の売り場の担当と思われる年配の女性スタッフがやって来た。注意されて連れて行かれるのかと思いきや、この女性スタッフは「まぁまぁ～お母さん、大変だったね～」と声をかけている。
「こんなに小さい子供を2人も育てるの大変だったよねえ。育てるのに大変で休む暇もなかったよね」「最近は、ろくに寝てないんでしょ？イライラしたって仕方ないよねえ～」

次に、男の子2人に語りかける。「よく泣いたねえ。子供の仕事は泣くことだからねえ。エライねえ。お兄ちゃんは弟ができたからガマンしていたんだねえ。エライねえ。2人ともエライねえ」と、子供の頭をやさしく撫でて、お母さんの肩を抱いてその場を立ち去った。

お母さんは、男の子を抱きしめて泣き崩れる。
別のスタッフがそっとお母さんにハンカチを差し出した。

以前、駅のホームで子供に平手打ちをした母親の姿がSNSに投稿されてニュースになったことがある。
私たちは、その場だけをみて判断してしまうもの。
子供への暴力は肯定されるものではないが、この場面をみたら、どのように感じるだろうか。