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イスラム国はなぜ独善的で残虐なのか

2015年02月07日 05:02

イスラム国は、最高指導者であるイラク人のアブバクル・バグダディを、イスラム共同体の最高指導者預言者の代理人)である「カリフ」と位置付け、自らの国をイスラム法(シャリーア)に基づくカリフ制国家としている。

そして、イスラム国指導部が司るイスラム法による統治は絶対的なものであり、抵抗する者は徹底的に排除するという考えを隠していない。

 なお、イスラム法とは、現在すでにサウジアラビアイランなどのイスラム国家で採用されている法体系だが、イスラム国はその厳格な適用を掲げている。

 ただし、イスラム法には統一された明文規定がない。
イスラムの考えでは、それはまさに唯一神アッラー)の教えということになっており、その法源預言者ムハンマドが神から啓示を受けたとされる聖典コーラン」と、ムハンマドの言行(スンナ)に拠っているのだが、それらには曖昧な表現が多くある。
また、人間社会のすべての分野を細かく規定しているものでもないし、もともと7世紀のアラビア半島の社会風土で誕生したものだから、現代の人間社会には単純には重ねられない部分もある。
 
 そこで、イスラム法学では昔から、コーランスンナの「解釈」が重要視されてきたわけだが、どうしても解釈には幅も出る。イスラム国は、自分たちの統治はイスラム法に則ったものだと主張しているが、それは彼ら自身が勝手に解釈している独善的なイスラム法にすぎないのだ。

 したがって、世界各地のイスラム指導者およびイスラム教徒の大多数、さらにはあのアルカイダ指導部までがイスラム国を批判している。
だが、それでもイスラム国は、自分たちの指導者カリフと称し、自分たちのイスラム法解釈を絶対的なものと見なしている。
自分たちは絶対的な存在という考えで、それをもとに「自分たちに従わない者」「異教徒異端者と見なす者」に対して、生殺与奪の権を持つと認識しているのである。
 実はイスラム法における異教徒への対応については、それこそ聖典の解釈などをめぐってイスラム学の一大論点になっている分野でもある(「イスラムは寛容か否か」論争など)。

 イスラムは本来、唯一神への信仰預言者ムハンマドに啓示された言葉(コーラン)の実践こそが人を正しく導くという宗教だ。無実の人間を随意に殺してもいいなどという教えはない。

 ただ、聖典コーランには、宗教共同体間の闘争が激しかった7世紀当時のアラビア半島の社会事情が反映され、無神論者や異教徒に対する差別的で攻撃的な文言が含まれること、さらにはムハンマド以降のイスラム社会内部の宗派対立はまさに血塗られた闘争の歴史であったこと、などは指摘しておきたい。

こうした戦闘的な部分を「ジハード」(聖戦。本来はイスラムの実践のための努力を意味する言葉)として拡大解釈するのが、イスラム国に限らず、世界中の「イスラム過激派」の特徴とも言える。

 イスラム社会は、1000年以上も前から、時代に合わせて「解釈」の努力を続けてきているのだが、イスラム過激派の多くはサラフィー思想(初期イスラムへの厳格な回帰)を掲げ、7世紀の時代背景で誕生した激しい言い回しの部分を、単純にそのまま再現実行しようとする傾向がある。

 そうした絶対的優越意識を背景に、イスラム国の戦闘員が実際に行っていることは、捕虜の処刑、異端者あるいは非服従者の処刑や拷問および実質的奴隷化(特に女性戦利品扱い)、略奪や営利目的誘拐、改宗強要、強制徴兵(子供含む)といった数々の蛮行だ。

 これらは必ずしも彼らのイスラム法に則ったものとも限らず、単なる欲望の発露にすぎないケースも多いが、イスラム法の絶対的施行者という彼ら自身のタテマエに、それらは正当化されている。

 しかし、イスラム国の残虐行為は、それとは本質的に性質が違う印象がある。やはり自分たちの全能感を背景にした行為であって、そこに狂信者たちは疑いを持っていないようにみえる。

彼らには微塵も「悪事をしている」という自覚がない。堂々と人を斬首し、晒し首にすることが神の意思の実践だと、自らを誇っているのである。
 こうした相手に、平和的な交渉で妥協を促すというのは、まず不可能と言える。

イスラム国はその性質上、妥協というものはしない。
彼らと平和的に共存するとすれば、彼らの絶対的な統治を認めて、世界中がその下に屈服するしか方法がない。つまり、イスラム国との平和的共存は無理なのである。

日本人には理解できない悪行もイスラム法では正義の行為となる。
狂信的なカルト集団に対して、正義を説くことは意味がない。
彼らは自らが神の教えであると信じ込んでいるのだから。
正義とは何か、イスラム法の持つ闇は濃い。

このデジログへのコメント

  • asami★ 2015年02月07日 21:21

    神様の教えを、自分達の都合良く解釈していますね。
    イスラム国の兵士になって後悔している人が多いみたい

  • ようしん 2015年02月08日 02:35

    > あさみさん

    宗教の怖さはマインドコントロールで、悪事を善行に変えてしまうところでしょうか。オウムの時も同様の想いをしました。

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