エボラ出血熱が広がっている

●エボラ出血熱

エボラウイルスが原因で起こる感染症。「エボラ熱」「エボラウイルス感染症（エボラウイルス病、Ebola Virus Disease、EVD）」とも呼ばれる。インフルエンザ様の症状から全身からの出血まで、その激しい症状と高い病原性（後述）から、最も恐れられている感染症の一つである。致死率はおよそ50%～90%。ただ、数々の報道によって少々大げさに言われているが、90%（厳密には88%）というのは歴史上の最高値であり、まだ医学が発展途上であり、かつ発展途上国で、たった一度だけ確認された致死率である。実際は、高くて60%程度となっている。


世界保健機関（WHO）の8月15日の発表では、8月13日時点で、ギニア、シエラレオネ、リベリア、ナイジェリアの４カ国で、2127人の感染が確認され、うち1145人が死亡した。2日のうちに約200人の感染が確認されたが、これは氷山の一角であると言われている。現地の医療関係者も100人以上が感染、およそ半数が死亡した。

【2014年8月15日時点での情報】
●国別感染者
ギニア　519人（死亡380人）
リベリア　786人（死亡413人）
シエラレオネ　810人（死亡348人）
ナイジェリア　12人（死亡4人）
合計　1779人（死亡961人）
●疑い感染者の出ている国
マリ（6人）　4月4日時点。現在の詳細は不明。
フィリピン（7人）　シエラレオネ帰りの労働者。日本での報道が少ない。
ベナン（2人）　AFP通信が報じた。詳細は不明。
ウガンダ（詳細不明）
ミャンマー（1人）22歳男性。
コンゴ民主共和国（数人）既に死亡。

エボラ出血熱の治療薬は日本で開発された。
ただし、まだ承認申請中。


富士フィルムの参加である富山化学工業が開発した。一般名は「ファビピラビル」、商品名は「アビガン錠」。
インフルエンザの新治療薬として研究開発が進められ、完成に漕ぎつけた最新の錠剤。これまでの作用とは異なる方式で作用し、通常の季節性インフルエンザだけでなく鳥インフルエンザにもこれまでのインフルエンザ治療薬と比べ非常に効果があり、未知の新型のインフルエンザにも高い効果が期待できるために、2014年3月に日本でインフルエンザ治療薬として承認されたが、妊婦に使用すると多少の副作用が生じる恐れがあるとして、新型インフルエンザパンデミック（流行）が起こった際にのみ一般で使用できるように制限がかかった（厚生労働大臣の要請があって、初めて製造・供給される）。アメリカでは間もなく承認される。数兆円規模の莫大な利益を見込んだ、非常に期待されていた治療薬だっただけに、開発企業や専門家のショックは大きかった。だが、むやみに使用して耐性ウイルスができてしまっては元も子もない為に、いずれにせよ使用を控えている状態は正しい判断であったと言える。
「RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤」が薬剤としての正式名称で、簡単には、RNAウイルスが増殖する際、RNAの複製を阻害することで、ウイルスの増殖を抑えるというもの。これまでの方式は、増殖したウイルスが細胞から出るのを阻害していたが、この治療薬は増殖自体を抑えることができる。単純に考えるとRNAウイルスには全般に効く可能性があり、インフルエンザウイルスをはじめエボラウイルスもRNAウイルスなので、エボラウイルスにも効果的である可能性があるとして実験を行い、エボラウイルスにも高い効果が現れた。この方法でウイルスの増殖を抑える治療薬は今までに無く、これまでの方法の治療薬に耐性を持ったウイルスにも効き、新型インフルエンザ等の新型ウイルスや薬物耐性ウイルスが流行した際にこの治療薬の活躍が期待されている。
現在も日本やアメリカでエボラ出血熱治療薬としての承認を申請中で、臨床試験も予定しているという。インフルエンザ治療薬としての臨床試験では特に問題は発生しなかったため、またインフルエンザ治療薬としての量産体制もある程度整っているため、さらにエボラ出血熱の世界的流行が危惧されている中で承認までを迅速化する動きがあるため、エボラ出血熱治療薬としては現在最も一般への流通が早いと言われている。
2014年の西アフリカでのエボラ出血熱流行を受けてWHOが未承認エボラ出血熱治療薬の使用は妥当だと判断したことを受け、厚生労働省は国内でエボラ出血熱患者が発生した際に、このファビピラビルを使用する方針だと会見で話した。韓国政府も、ファビピラビルを大量に購入することを検討しているという。