乙女座

秋晴れの朝ちょうど良い角度で朝陽が庭と縁側を照らしている



コーヒー、自家製ヨーグルト、柿、葡萄パンをお盆にセットして庭に出た



昨日まではなかった秋祭りの紺色の幟が表の道の庭の角にあたる位置に立っている



立てられる位置は決まっていて石で囲まれた地面の穴に径10冂垢10メートル程の竹竿を差し込み四方から木の杭を打ち込み縄で縛る



今週の土曜、日曜がこの辺りの秋祭りだ



縁側に坐りしばらく眺めてみた



子供の頃から19歳の時に御輿を担いだときまでを思い出しながら朝食をとった



近くの別の町には有名なケンカ祭りもあるがここの祭りは田舎らしく慎ましい



10人ほどの老人の一段が歩いてきた



祭りの幟立ては老人会の役目になっている



少し大きな楽しそうな話し声の中に女性の声がある



祭りの開催には部外者の彼女だが毎年裏方として参加してもう５年になる



ここの祭りが好きだと言った



祭り見物を兼ねて週末の３泊をここで過ごすために神戸からやってきた



静かな田舎の夜に少し絞った個性の強い排気音が響きすぐに彼女だとわかった



兄から譲られたというそのモトクロッサーは公道走行を考慮した４ストローク水冷のデュアルパーパスマシンだ




モトクロッサーに乗り祭り好きで年寄り受けする彼女だがその雰囲気は女性の曲線が際だつ静かな32歳の大人のものだ



少し長めの風呂から出て来た彼女は浴衣姿のまま神戸から持参したローストビーフをならべワインを準備した



おそらく素肌に浴衣だけの風呂上がりの彼女の雰囲気とワインをゆっくり楽しんだ



“いい女”がここにいる




縁側に座りしばらく幟を眺めていた彼女は「ヨシ！」と小さく頷き俺の方を向くと最高に清々しい笑顔を見せてくれた




秋祭りは五穀豊穣を神に感謝する祭り



日本の神は性に対して寛容でむしろセックスを奨励し悦びとしている



実りの秋の祭りの夜は長く温かい