乙女座２

木枯らしが吹いたので楽しみにしていた吊し柿を作ることにした

いい色で枝が折れるほどの実をつけている

実家へ越してきて３度目の作業になるが毎年この時期を楽しみにしている

神戸の奈緒美にはそのことをメールしておいたが当日の朝我が家へはほぼ同時に３人の女性がやってきた

昨年吊し柿を作ったときそれぞれにプレゼントしたので今日辺り作業すると思っていたようだ

３人は初対面だが打ち解けるのに数分とかからない

個人が自律した感情を持っていることをそれぞれが理解し他を認めることに何のためらいもない素敵な女性達だ

年齢も５歳ずつ離れた姉妹のように見え顔やプロポーションまで似ていることに何故か納得している自分に苦笑した

11月最後の土曜日　小春日和の田舎は心和む雰囲気でゆったりとしている

皮をむき１辰曚匹遼磴劼發10個ずつ吊していく

仕上げにブランデーを霧吹きで１つ１つに吹きかけるのが俺のやり方だ

裏庭の日の当たる軒下に吊された柿は晩秋の小春日和にふさわしい

４人での作業は昼過ぎに予定の500個を作り終え気持ちがいいのでそのまま裏庭で昼食をとることにする

昼前に打っておいた蕎麦にホウレン草とだし巻き乗せた田舎蕎麦とダッヂオーブンに遠赤石を入れて焼いた石焼き芋を用意した

彼女たちは久し振りにあった本当の姉妹のように楽しくしゃべり続けている

そういう女性達を静かに眺めているのがすごくいい

ここに愛という単語を登場させたくない　　似合わない

それぞれに爽やかなセクシーさを身にまとった　いい女　は雰囲気にも敏感でそれを壊しはしない

晩秋の深く蒼い空に吊し柿と彼女たちをフィルムに収める

カメラを意識しない彼女たちの自然な姿はファインダーを通すと個々の存在ではなく一つに結合した美しい分子配列となってフィルムに記憶される

優しくシャッターを押し込んだ

メカニカルなチタン幕フォーカルプレーンの乾いたシャッター音がお気に入りのニコンFM2フルメカニカルのフィルムカメラだ

現像は奈緒美に依頼し高解像度スキャンしたデータを送ってもらうことにする

テーブルにティーセットとたっぷりの紅茶ポットを置きタバコに火を付けた

時間はゆっくりゆっくり雲と共に流れる

限りなく透明で高い蒼天をスローモーションの弾丸のように飛行機雲が二分割していく

ワインを買いに行こう

ゆっくりと歩いていこう　あの雲を追い越さないように