我慢すればする程笑いたくなる症候群

皆さんは…

絶対に笑っちゃダメな状況なのに…
笑ってしまった…

いや…

大爆笑してしまった経験はありますか？


そんな話しです…






山さんと横浜の現場に行った時…



現場の引き渡しが間に合いそうになく…
前日から現場に入り

徹夜で…
何とか作業が終わったのが、次の日の夜の８時…


やっと帰れる…と
片付けをしていた





さぁ帰れるね～
シュウジちゃんのお陰で
何とか間に合ったよ
徹夜まで付き合わせて
悪かったね
ありがと！



いえ いえ
大丈夫ですよ！


山さんも疲れてるから
帰りは僕が運転しますよ

などと話しながら…
僕は道具を車に載せ

山さんが脚立を車の上の
キャリアに載せている時に…



シュウジちゃん
後…僕が載せておくからもう良いよ
コーヒー買って来て！


は…はい！


コーヒーを買って戻った時には…


もう山さんは車の運転席に、しっかりとシートベルトを締めて座っていた…




いつもの様に…

作業着を脱いで…

七分丈のステテコで…

リラックスして…





僕に気を使って…


自分が運転する為に
僕にコーヒーを買いに行かせて…

急いで運転席に座ったんだなぁ


優しい人だなぁ





でも…

大丈夫かな…



・・・・・・・・・・・・



一般道を走り…

第三京浜という東京と神奈川を結ぶ高速道路に入り順調に走っていると…


いきなり…


山さんが…


うわぁっ！！
ク…クジラだぁ－！


と…


クジラ！？


そんなの高速道路にいるはずないよ…


やばっ！
居眠りで幻覚見てるんだ

と思い…


山さん！
大丈夫で…す…か…





うわぁっ！
クジラ！

シュ…シュウジちゃん！！

前！
ほら！前！


山さんは歳の割にめちゃくちゃ目が良いはずなのに…





と…

今度は…

前を見た僕が…


うっわぁぁぁ～
ホントにクジラだぁっ～？



４車線ある
真ん中に…
１車線にまたがる位ある大きな何かが…


そういえば…
クジラのような…？？




いや！
ち…違う！







ブ…ブタだあっ～



山さん！
危ない！

早く避けて！


おっ！
おう！


と…


急ハンドルをきって
何とか車線変更…


良く見ると…


見た事もないくらい…

ホントにクジラと間違える位…


（いやいや…
さすがに高速走っていて…
クジラって言う発想はないな…
山さんらしい…）



とてつもなく大きなブタが落ちていた…






正確には…


高速道路の真ん中に…


ホントに居た…







通り過ぎる瞬間…



何かを僕に訴えたいかのような…

切ない目をしていた…

そのブタと目があった…



余りの巨体を支えられないのか…

車から落ちた時に…
足を怪我したのか…

足をくの字に曲げ…

正座しているように…
横たわって…

確かにブタだとわかるように耳をピクピクさせて…

間違いなく…


そこに居た…



かわいそうに…



と…



思っている間もなく…



ガッシャーン！



後方から凄い音が聞こえた





やばい！
あのブタ！

と…直ぐに振り返ると…



もの凄い火花が散っていた…



えっ！？




僕はてっきり
後続の車が
あのかわいそうなブタにぶつかったのかと…


思った瞬間…





シュウジちゃん！
車から脚立が落ちた～
固定するの忘れてたぁ！





…………！？






現場を出る時…

どうやら山さんは…
僕がコーヒーを買いに行ったら急いで運転席に座って…

脚立をキャリアに固定するのを忘れたらしい…

ということは…
ただ車の上に置いただけ…


さっきの急ハンドルで…


いやいや…
今迄落ちなかったのが不思議なくらい…





山さんは…





やばい！

死亡事故が
捕まってしまう～ ！



（多分…
脚立が原因で死亡事故が起こって…
落とした自分が警察に捕まってしまうの意味…）


と…


日本語がむちゃくちゃになるくらいパニックになって…

高速道路のど真ん中で…


急ブレーキ！


後ろに積んであった
道具や荷物が…
座席の方に崩れてきて…

僕の後頭部を直撃！


アイタッタタタァッ～

頭を押さえながら…



山さん！
落ち着いて！

高速道路のど真ん中で停まったら
後ろから追突されますから！
路肩に移動して下さい！！


と言った途端…






はいっ！
わかりました！

と何故か僕に敬語で…




今度は急発進！


後ろの荷物が…
前や後ろの大騒ぎ！


しかも…

落ちた脚立がよっぽど気になるのか…

山さんは
全く前を見ず…
バックミラーしか見ていない…



山さん！
前見て！ 前！



また急ブレーキで…
やっと路肩に停車…


その途端…
ギヤーがドライブに入ったまま…


ドアを開けて
脚立を回収する為に…
飛び降りようとするけれど…


ギヤーはまだドライブに入っていて…
サイドブレーキも引いていないので…

当然…
車はトロトロと動いている…





山さんは
パニックっていて…
なんで車が動いているのか全く分かっていないばかりか…


片足を地面に付けて…

真っ赤な顔になるくらい力いっぱい踏ん張って…

車を停めようとさえしている…





や…山さん！（笑）
何やってるんですか！？ そんなんで車…
止まらないですよ…

ブレーキ！
ブレーキかけて！



……………………

山さんの…
パニックった不可解な行動に…

この辺から…僕は…
笑っちゃいけないのに…

ツボに入って…

「我慢すればする程笑いたくなる症候群」

に陥っていった…

………………………


わ…わかりました！


山さんはまだ…

僕に敬語…（笑）





やっと完全に停車した…


と…


同時に…


ドアを全開にして…
また飛び降りようと…





この状態で降りたら…


……………………

５０過ぎの…

バカボンのパパに似た…

山さんが…

高速道路を…

ステテコ一枚で…

鬼の形相で…

猛ダッシュで逆走！



の図……


……………………


想像してしまった…

更に想像が止まらない…


………………………

すれ違う車の人達は…

アッ！
このステテコのおじさんが、あのブタを落としたんだなぁ…

走って戻ってるけど……どうして連れて帰るんだろ…

って考えるんだろうか…


………………………


とか…
どんどん想像を膨らませて…

心の中では…
もう大爆笑！！


でも…
必死で笑うのを我慢して…


山さん！
危ないから落ち着いて！







でも…もうそんな声は…


山さんには…
聞こえていない…



運転席から飛び降りて…

脚立を拾いに…


走る！


走る！



そして走る！


まだまだ走る！


もう…

その時点で…


僕の笑いのダムが決壊……

我慢の限界…



大大爆爆笑笑！！！




想像した通りの…


光景が…


目の前で…


繰り広げられている…







そう…



ホントに…

目の前で…？




だから余計に大爆笑！




山さんが…

ステテコ姿で…

鬼の形相で…

猛ダッシュで…

目の前で…

走っている…



でも正確には…

止まって走っている…

全く前に進んでいない…


正確には…


進めない…




なんで進めないのか…

山さんは全く分かっていない…



でも…

下半身は走っている…




そう…




山さん…



シートベルトを外すのを忘れて…

しっかり…


腰に巻き付いている…




腰の何かが邪魔して前に進めないのは…
分かっている様子…





だけど…


あまりにもパニックっていて

それが…
シートベルトだという事に気付かない…



高速道路でランニングマシン状態…


もう…


僕は…
腹を抱えて…

山さんを指さしながら

息が出来ない程…


大爆笑！！





……………………




その後…



ランニングマシン猛ダッシュをして…

ゼェゼェと咳込みながら息がきれて…

疲れきっている…


山さんを…

落ち着かせて…


車の助手席に…
しっかりシートベルトで固定して座らせ…



気を取り直して


ちゃんと発煙筒を焚いて…



笑い過ぎて出た…
涙をふきながら…


路肩を歩いて…

事故になる前に…

無事…

脚立を回収したのは
言うまでもありません


………………………


運転を代わった
帰りの車で…


何事もなかったように…
疲れきって…

すやすやと眠る


山さんの…
あどけない寝顔をみながら…



やっぱり…



シートベルトは…



命のベルトなんだなぁ…


と…












でも…






車外でも有効だったとは…