デジカフェはJavaScriptを使用しています。

JavaScriptを有効にすると、デジカフェをより快適にご利用できます。
ブラウザの設定でJavaScriptを有効にしてからご利用ください。

人間の業 (裏より転載)

2009年03月08日 14:34

随分昔になるけど、テレビで見た「トワイライトゾーン」の一エピソード。

タイトルは

To see an invisible man

というものだったと思う。


Invisible = 眼に見えない、という意味で、将来社会でInvisibilityという刑罰が施行されている、という設定。これは額に人工的にデキモノをくっ付けるんですな。これが自然に出来るものとは明らかに違っており、見た人は一目でその人がInvisibilityの刑に服している、ということが分かる、という仕組み。

この刑に服している人に対して、周りの人はその人が見えないように振舞わなければいけない。



つまり完全無視。



だからこの刑に服している間、その人は誰とも一切、話が出来ない。まー今の社会ならメッセだのデジで普通の人を装って、ということが幾らでも可能だけれど、この番組が放送された当時はそれは予見されていなかった。
電話はすべてテレビ電話で、相手の顔を見ながらしか話せない仕組みなので、誰に電話しても額の証を見せなければならない。その時点で相手は電話を切ってしまう。

で、このエピソードは主人公が一年間のこの刑に服して人々に無視され始めるところから始まる(何の犯罪を犯したかは語られないが、相当の悪人だったことが分かる)。始めは調子に乗って、カフェテリアで好き放題して金を払わずに店を出たりと平気だったこの主人公は、やがて誰とも話が一切出来ない、という状況が堪え始める。



つまり、寂しい。




寂しいだけでなく、実害もあった。主人公は夜の街で無頼漢に襲われて大怪我をする。病院に電話して助けを求めるが、対応した看護婦に最初は額を隠して怪我を説明する主人公。だが看護婦は、額を確認するまで助けようとしない。

そう、この社会では、Invisibilityの刑に服している人と話すことは重罪なので、誰もそれを犯そうとしない。

このままでは助けてもらえないことを悟った主人公、最後には渋々と額を見せると、表情を変えた看護婦はその瞬間に電話を切ってしまう。




レストランでは眼の見えない老人に席を譲って、礼を言われるところから会話が始まって、数秒間話し続けるが、やがて気がついたウェイトレスがやって来て、その老人に"Invisible."と耳打ちすると老人は血相を変え、押し黙ってしまう。




ある時、モールの出口で、向こうからやって来た若い女性が同様にInvisibleの証を額につけていた!! 主人公は泣きながら「僕と話しをしてくれ!!」とすがり付くが、罪が重くなることを恐れた若い女性は彼を無視し歩み去る。泣き崩れる主人公。しかし、彼を助ける人はない。

この社会では、無人の監視装置が街中を浮遊して人々の行動を監視している。いくら善意を持った人がこれらの罪人を助けようと思っても、官憲の眼を逃れて実行することは不可能、という設定。



これが一年続いて、もう部屋から出なくなっていた主人公のところに刑務官がやって来て特殊な器具で額のデキモノを除去。これが刑期明けの儀式。

額には跡すら一切残らない。

善良な一市民として再出発した主人公は生まれ変わったようにModelcitizen、模範的市民となっている。生まれ変わったように、というより物語の中で彼は真に生まれ変わった。一切の悪事から離れ、懸命に働き、周囲もそんな彼を受け入れて順風満帆。




ところが。




ある日、あのモールのあの出口で、彼は再会してしまう。あの、嘗て自分を無視した、当時同様にInvisibleだった彼女と。彼女の刑期は終わっておらず、額には今だInvisibleの証がある。しかも彼女は彼を覚えていた。

「私と話して。お願い。あの時はご免なさい」

彼を認めた彼女は彼の刑期は終わっており、一市民に戻っていることを理解するが、そんなことはお構いなしに自分と話して、とすがり付く。

一度は一切見えないかのように彼女を無視して歩き出す主人公。


「お願い。私が悪かった。私にどうしてそんなに冷たく出来るの??」

泣きながらすがり付く彼女。彼は・・・




立ち止まり、下を向いて何かに耐えている。



尚も彼の脚にすがり付く彼女。それを見咎めた浮遊監視装置は二人の周りを浮遊しながら彼女に対して警告を発し始める。

「罪人、その市民から離れなさい。刑が重くなるぞ」


彼女にはその警告は聞こえない。尚、主人公の脚にすがり付き、狂ったように泣き叫ぶ。




で、主人公は・・・




意を決したように顔を上げた彼は振り返り、彼女を抱き締めて言った。

「貴女はInvisibleじゃない。僕には見えるよ。」


特殊な絆で結ばれた二人は泣きながら抱擁し合う。浮遊監視装置は彼に対して警告を発し始めた。

市民、その人はInvisibleです。貴方法律犯しています。すぐに離れなさい」



警告を無視し、尚も抱擁を続ける二人。



ここで物語は終わり。






これを見たのは確か学生時代なので、もう20年以上昔。でもこのエピソードは、人間の業を深く抉るところがあり、未だに忘れられない。

どのような社会でも実際にこうした刑罰が施行されることはないと思うし、そうあって欲しい。


でも、もしそうなったら・・・


街でこの刑に服した人に「話しをして」と泣いてすがり付かれたら、あなたは無視できますか?

その人がそのような罰を与えられたには相応の理由があるに違いない。



しかし。

このデジログへのコメント

  • かなさん? 2009年03月09日 15:02

    仕事柄…業を感じる事も多いです…
    仕組まれたような出来事って、意外と多いものです…

コメントを書く

同じ趣味の友達を探そう♪

  • 新規会員登録(無料)

プロフィール

ベソ

  • メールを送信する

ベソさんの最近のデジログ

<2009年03月>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31