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ヴァンダの部屋

2007年12月22日 02:02

ヴァンダの部屋

DVDのケースに蓮實重彦による「映画の二十一世紀ペドロ・コスタの「ヴァンダの部屋」とともに始まる」というシールが張ってあります。蓮實重彦っていうのは、フランス文学者にして、東大教授にして、映画評論家ですが、彼のいつものなめくじがのたくるような文体にしては珍しくわかりやすい讃辞です。「凡庸な芸術家の肖像」は我が家トイレにある本のひとつですが、ひまなときに時々読みますが、蓮實氏の文体の晦渋・難解のために、もうトイレに数年置いてあるのに十ページくらいしか進んでいません。その彼の讃辞を送られた映画ですから(彼が教養学部で映画ゼミをしていたときにその参加条件は、たしか年間200本だか300本だかを鑑賞することでした。もちろん僕はあきらめたのですが)、きっと面白いと思ったのですが、これがなんともすさまじい映画でした。
 舞台リスボンの打ち捨てられた街で、なにやら工事をしています。家を壊しているのです。そうした、壊れつつある家の小部屋にヴァンダが暮らしています。彼女はひどい咳をしながら、アルミホイルをマッチであぶり薬を吸引しています。いっぽう、ちかくの家にはバンゴだかニョーロだか(名前もたくさんあるみたいです)という黒人青年がいて、彼は友達と一緒に麻薬を吸引したり静脈注射をしてくらしています。ヴァンダの姉は刑務所にいるみたいですし、多分姉の子供、両親がいて、これが口喧しくて、ヴァンダはいつもけんかをくりかえしています。環境は劣悪で、こんなところに住むというのはどういう人生(失礼!)なんだとも思ってしまいますが、住民同士にはつよいコミュニケーションがあるようです。
 場面がかわるごとに少しずつ壊されていく街の建物、それを静かに追って行きながら、大きな物語はなく、178分の映画は最後はほとんど動かない映像でおわります。
 娯楽を映画に求める人にとっては、たぶん最初の数分でたちさるでしょう。もしくはストップボタンを押してしまうでしょう。しかし、映画から人生を学べる、もしくは人間という存在を学べると信じる人にとっては意義深い映画です。

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