初めて

コンコン

バスルームから音がした。

バスルームとベッドルームはガラス窓で仕切られていて、君がさっきお風呂に入ったところ。
君が裸を見られるのは恥ずかしいと言うので、お風呂には一緒に入らず、僕はバスルームに背を向けてベッドに座り、スマホをいじっていた。
コンコンって、シャワーか何かの音かな。


コンコン

もう一回、音がした。
君に怒られないように、少しまわり込んでバスルームの方を見ると、くもっているガラスの奥で、バスタブにつかった君が、中からガラスの仕切りをノックしていた。

何か用があるのかな？

おそるおそる近づくと、君が手まねきして、バスタブの中を指さしている。

中に入れってこと？

僕は、バスルームのドアを少し開けて、君に声をかけた。

「入って、いいの、かな？」

「シュージさん、一緒に入りたいんでしょ？来ていいよ。」

僕は急いで服を脱いで、バスルームに向かった。

「入るよ」

僕が声をかけて中に入ると、照明が薄暗くなっていた。
そして、横長のバスタブの前の方に膝を曲げて君が座って、後ろが空いていた。

「後ろに来て、そしたら、見られないから」

僕は裸の君の後ろに座って、君を抱きしめた。
温かいお湯と君の身体の感触を味わっていると、君が言った。

「男の人と一緒にお風呂に入るの、初めてなんだよ」

そうか、僕はそんなに特別な存在なのか、、、
でも、今まで付き合ってきた男って、、、

僕は、複雑な気持ちになり、君を抱く手に一層力を込めた。