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「リスボンに誘われて」

2016年04月19日 08:00

「リスボンに誘われて」

2014/9/12
08:00 120スイス生まれの作家哲学者パスカル・メルシエの小説リスボンへの夜行列車」(早川書房浅井晶子訳)が映画になった。「リスボンに誘われて」(キノフィルムズ配給)だ。小説、映画ともに傑作と思う。ある人物の過去を手繰るミステリータッチ、風格があり、なにより品がある。それぞれ、ぐいぐい引き込まれてしまう。原作と映画では、状況の設定に数々の変更点があるが、映画は、基本的に原作のエッセンス踏襲している。スイスベルンにある高校で、文献学を教えている初老の教師ライムントが、ある本と出会う。アマデウ・デ・プラドという人物の書いた「言葉の金細工師」で、その文章にライムントは感銘を受ける。著者のアマデウに会おうと、ベルンから出るリスボン行きの夜行列車に乗り込む。アマデウは若くして亡くなっていたが、その妹や、親友、教師に会い、昔の話を聞くうちに、アマデウの素顔、人生が判明していく。ライムントは、かつてのポルトガル独裁に抵抗したアマデウの起こした事件や、アマデウたちが秘密警察に追われた日々、アマデウたちの恋愛真実を知ることになる。そして、今までの平凡で、無味乾燥だった自らの人生と向き合うことになる。そう、本作もまた、主人公が、人生を振り返る物語。そして、あり得たかもしれない人生に思いを馳せ、未来決断する物語でもある。ライムントは、アマデウの過去を知りたくて、リスボンの町を歩く。ちょうど、アントニオ・タブッキの小説レクイエム」の主人公が、多くの筆名を使い分けたポルトガル詩人フェルナンド・ペソアと会うために、リスボンを歩いたように。また、ヴィム・ヴェンダース監督の「リスボン物語」では、録音技師が、失踪した友人の映像作家を探すために、リスボンを歩いたように。ライムントの現在と、1974年4月カーネーション革命前夜が交錯する。サラザールによる独裁に、ポルトガル共産党は抵抗する。60年代、ちょうどアマデウたち若者もまた、抵抗運動に情熱を燃やしていた。ライムントは、アマデウの過去を知るにつれて、自らを振り返る。もちろん、その引き金は、アマデウの書き残した文章「言葉の金細工師」である。

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