接触

『19日予定空けてたんですけど
食事が25日になったから予定空いちゃって…
そちらは空いてませんか？』




からかい半分で送ったメール。

職場で他の人よりも
ちょっと仲が良いという優越感から

あと一歩
近づきたいと思ってしまった。


メールの返事は

「じゃあ仕事終わったらどっか行こうか」



私は19日
出先で仕事を終える予定になっていたので

彼は
「こっちの仕事が終わったら迎えに行くから
どこかで適当に時間潰してて」

と私に伝えた。



そして当日


私は職場から離れた出先で仕事を終え
彼が迎えに来るまでカフェでお茶をしながら待った。


彼から仕事が終わったと連絡が来る。


その30分後、彼から着信。



着いたよ
交差点の近く

え？どこ？？どんな車ですか？

黒い車
あ、居た
左の方見て

あ、わかった…！


私は電話を切り
素早く助手席に乗り込んだ。



お疲れ様です

お疲れ様

なんか変な感じですね(笑)

そうだね(笑)



食事をするわけでもなく

お茶をするのでもなく

出先に迎えに来てくれて
そこから家の近くまで送るだけのドライブ。

高速に乗れば早く帰れるけど
彼は
「下道でゆっくり帰ろうか」
と私に提案した。



車の中では
お互いの事を色々話した。

仕事のこと

家族のこと

趣味のこと…


特に仕事の話は
普段職場でしか会ったことがなかったのに
二人でドライブしながら話しているこの状況が
何だか可笑しくて二人で笑った。




ふとした瞬間

彼が私の目尻の横に手をかけた。

それと同時に
私は口角にツンとした感触を感じた。

知らないうちに
私は自分の髪の毛を食べていたことに気がついた。


『あ、ありがとうございます』

「触りたかっただけかもよ？」

『またまた～(笑)』



そこから
触れ合う回数が多くなっていく…


彼は運転の途中、
左手で私の右手にそっと触れた。


触れることから始まって

指を握ったり

手を握ったり

次第にお互いの指が絡み合っていく…



『いやいやいや…
ちょっとドキドキするんですけど…
もーどうしよう…』


私は手を絡めたまま
顔を伏せて悶えてみせた。


彼は運転で一時的に手を離しても
すぐにまた私の手に触れてくるようになった。



そんなやりとりを繰り返しながら
家の最寄り駅のロータリーに着いた。

一旦近くのパーキングに車を止めた。


「キスしてもいい？」

『え、、いや、ちょっと待って下さい…』

「すごくしたいんだけど…」

『え～……』

「もうちょっとこっち来てよ
運転席と助手席の間の部分が邪魔で遠い」

『いやいや、ちょっと待って…え～…』



私は曖昧な返答をしながら
キスを先伸ばしにしようとしながらも

そこで拒んだり、すぐに帰ることもできずにいた。


「キスしていい？」

『……』


ふっと彼の顔が近づく。


私はとっさに顔を背けて
両手で顔を覆った。


『ちょっと待って…
ちょっと待って下さい。。
…恥ずかしい。。。』



私の頭の中は

恥ずかしい
どうしよう
キスしたい

がぐるぐる回っていた。


ゆっくりと
顔を覆っていた手を離した私に

彼はまっすぐ私を見ながら言った。


「これで最後にするね。
……キスしていい？」


私は彼から目が離せずに


『そんなこと、聞かないで下さい……』


と困ったように彼に言った。


次の瞬間

彼の顔が近づき、唇が触れ合った。


最初は軽く触れて
次第にお互い味わうようにキスをした。


こんなキスをするんだ
と頭の片隅で考えながら
彼の匂いと感触に酔いしれていた。


唇が離れ

何とも言えない恥ずかしさが込み上げてきて

お互い笑った。


その後
私は車を降りて家に帰った。


旦那はまだ仕事から帰ってきてなくて
家には私一人。


彼との今日の出来事を振り返りながら
余韻に浸った。



ドキドキが治まらない…！！




次回へ続く♪