- 名前
- ベソ
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- ♂
- 年齢
- 64歳
- 住所
- 海外
- 自己紹介
- 我ハ墓守也。
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都会のライオン
2013年05月18日 23:31
…と聞くと皆さんはどんな想像をしはるやろう。
いやね、わしが今日書きたいこと、このタイトルから皆さんが想像しはることとは恐らく、大変違う対象です。
今日、自転車で食料品の買出しに出かけて、信号待ちをしている際の出来事。
わしの数メーター横で、一目でそれと分かるホームレスのおっさんが、何やらごそごそと動いています。
見ると吸殻入れを漁り、まだ吸える長さの吸殻を探しているようです。
わしはね、思わず観察してしまったんですよ。
ホームレスのおっさん達が例外なくそうであるように、肌は青銅色に焼け、髪はぼうぼうと伸び、身なりは、そう、形容の必要がない程にホームレスチックです。
大きく膨らんだ鞄を袈裟懸けにかけ、晴れているのにビニール傘まで持ち歩いています。
もう何年、風呂に入っていないのか。
床屋に行っていないのか。
そしてその膨らんだ鞄には、全財産が詰まっているのか…
瞬時に色々、想像しました。
そしてそのおっさん、わしを始めとして信号待ちをしている町の人々と目を合わせようともしない。
…わしは、感じるものがありました。
歳の頃はもう70を過ぎているでしょうか。
しかし、日を浴び過ぎて痛んだ肌のせいで老けて見えるのかも知れず、実際はもっと若いのかも。
もう老人であってもおかしくない歳でしょうが、しかしこのおっさん、「爺さん」と呼ぶ気が起こらない程矍鑠としています。
いや、ホームレスのおっさんにそうした表現は相応しくないのかも知れませんが、しかし腰は曲がっておらず、動作は機敏、何よりも、そう、自分で獲物を探すハンターの風格がありました。
風格。
そんな言葉、ホームレスのおっさんに対して用いること、驚かれるでしょう。
でもね、わしはそのおっさんのこと、見ていてある種敬意を抱かずにいられなかったんですよ。
世の中には、働けるのにそうせず、国から生活保護をもらったり、或いは他人の好意に甘えて生活することに疑問を感じない人が大勢います。
誤解しないでください。本当に必要で、他に方法がなく国から生活保護をもらうことに対して、わしは何ら問題はないと考えます。恥じることもないでしょう。
しかしそのおっさんはそうして国の援助を受けることを良しとせず、一人で路上生活をする道を選んだ。
わしはそのおっさんがどうしてホームレスとして生活するようになったのか、その経緯やら事情やら現状やら、そして本当にホームレスなのかさえ知りません。
しかしそうであると仮定して話を進めるならば、このおっさん、常に死ぬ覚悟が出来ている、と感じられるんですよね。
誰にも頼らない。
誰の力も借りない。
病気になっても、怪我をしても、病院にも行かなければ医者にも診せない。
今の季節は良くても、冬の寒い夜、暖かい塒を得られずに凍死しても、誰も恨まない。
ただ、ひっそりと、誰にも知られず、翌朝死体を回収に来た市職員に身元を知らせるようなものは一切持たず、ただ無に還る。
普通に生活している町の人と交わろうとしないのは、自分が社会の異端であること、招かれざる客であることを自覚しているからでしょう。
その自覚があって尚、己の力で生きようとする。
わしは頭が下がる思いでした。
仮にここで何某かのキャッシュを渡そうとしたら、受け取ってくれるやろか…
ふとそんな思いが浮かびましたが、わしは信号が青に変わったので、そのまま向こうに渡り、振り返りませんでした。
要するに、自分の理解できないものと接触するのが怖かった訳ですね。
…しかし、そのおっさんのことが今でも頭から離れず、わしはこうしてログを書いています。
自分でも掴みようの無いその思念、突き詰めると、恐らくわしは怖いんです。
仮に、自分がそのおっさんの立場になったとして、あのように雄雄しく、誰にも頼らず、常に死を受け入れる覚悟をして生きて行けるか。
何かの事情で働けなくなったとして、家族に見捨てられ、頼る人がいなくなったとして、
その時に、一人でゴミを漁りながら生きていく覚悟があるか。
病気なり怪我なりで医者に診せたくなっても、それが不可能な環境で文句を言わず、自らの治癒力で治るなら治る、治らないならそのまま死を迎える覚悟があるか。
その死の瞬間、
誰にも看取られず、
誰をも恨まず、
今までの人生、受けた恩、好意に感謝しながら
黙って、微笑と共に消えて行くことが出来るか。
その覚悟があるか。
それを考え、恐ろしくなり、
それが敬意に変わったことに気づきました。
話は代わります。
ライオンの雄は狩をしない、と知っていましたか?
成獣となった雄のライオンは、肥大化した身体では彼らの主たる獲物である俊敏な草食動物を追い切れないんですな。
やから、自分の群れの雌に狩をさせ、その獲物にありつく。
ライオンの群れは「プライド」と呼ばれます。
その構成は、大人の雄が一頭。
大人の雌が複数。
その子供。
それだけです。
自分の子供でも、雄はある年齢に達すると群れから追い出されます。
そして自分のプライドを持つことを要求される訳です。
群れから追い出された若い雄は、放浪を続け、他のプライドを持つ雄に挑み続け、
負ければ引き下がり、
しかし勝てばそのプライドをそっくり引き継ぎます。
プライドの雌はすべて自分のものになる訳です。
この時、プライドにいる子ライオン達を、新たなプライド長たる雄が殺す、という事態が起こり得ます(必ずそうなる訳ではない、と記憶していますが…)。
そうして雌達が早く発情期を迎えることを促し、自らの遺伝子を残そうとする訳です。
では、自らのプライドを乗っ取られた、プライドを賭けた死闘に負けた雄ライオンはどうなるか?
それは…
野垂れ死にです。
先に述べたように、雄ライオンは自分で狩は出来ません。
そして肉食動物たる彼らが、草を食って命をつなぐことも出来ません。
つまり、自らのために狩をしてくれる雌を失った雄は、
その日から食うに困る訳です。
困るどころではない。
食料調達の手段がなくなってしまいます。
つまり、野垂れ死ぬしかありません。
何も食べるものがなく、やせ細った雄ライオンは、
動くことすら困難になり、
今まで適当にあしらっていたハイエナの群れを追い払うことが出来ず、
やがて食い殺されてしまう。
どうです?
それが現実。
で、わしはそのホームレスのおっさんを見て、
後で思い出して色々考えているうちに、
その雄ライオンの話を思い出しました。
そのおっさんが一時は自分のプライドを持ち、複数の雌に種をつける程ウハウハの生活をしてはったのか、わしには知る由がありません。
しかし、勝負に負ければ潔く死ぬ覚悟がある点に於いては、ライオンと変わらないのではないか。
つまり、彼らは都会のライオンである。
そう結論したわしです。
(今日見かけたおっさんのぼうぼうと伸びた白髪が、ライオンの鬣に見えた、という理由もありますが…)
ボランティア、慈善活動が社会の一部として根付いているキリスト教文化圏では、こうした生活できない層を対象に教会が無償で食事を提供したり、行政がシェルターを設けたり、が普通に行われています。
この辺り、ウィル・スミス主演の”The Pursuit of Happyness"にリアルに描かれていた通りです。
http://www.imdb.com/title/tt0454921/
しかし、我が国の事情は違います。
良し悪しではなく、社会がそれを受け入れる構造が出来ていない。
そして今や「貧困ビジネス」と称される、生活保護を狙った犯罪までが存在している。
やからこそ、わしはそうした層の自立を促し、支援する活動を実践している民間団体の関係者を尊敬する訳です。
そうした取り組みの一つが、「Big Issue」と名付けられた雑誌。
これをホームレスの方々に卸して、独占販売してもらう。
定価は500円。
売り上げと卸値の差額が、販売者の収入になる訳です。
これはね、凄い取り組みやと思います。
しかし、正直に告白しますが、わしはそうした事情を何かで読んで知っていたにも関わらず、
これまで街中でその雑誌を売っているおっさん達を多数見て来たにも関わらず、
買ったことがないのです。
ただの一度も。
これね、あかんと思います。
わしは一方的にではあっても、あのライオンのおっさんに与えてもらった教訓を胸に、
今度町で見かけた時は勇気を出して500円を払い、
買ってみようと思うてます。
Big Issue。
皆様ええ土曜の夜を。
このウラログへのコメント
言われなかったら私も「ただのホームレスの人」的な目線で見ていたかも
勉強になりました(^人^)
> 澪(みお)さん
そんな滅相もない。わしの想像でしかありませんが、しかし何の保証もない中で彼らが誰にも頼らず生きていることは事実。その意味で敬意を払うことは間違いではないでしょう。また寄ってください
> 未花さん
本当に自活できない層の為に生活保護のシステムは必要やけど、問題はそれを悪用する人が必ずいる、という事。国民の質の低下がそれをもたらしている訳で、すべては教育が元凶、というのがわしの持論。
> Remi☆さん
お礼なんて滅相も無い。でもホームレスは怠惰では務まらんと思うよ。蓄えがない彼らは食糧確保だけでも命がけ…誰も望んであんな生活を選ぶ訳やないしね…変なおっさんの独り言として聞いてね。
> ★MAYU★さん
過ちかあ~それはあり得るケースやね。確かに予備軍多そう…
「浮浪者」と書くとえらくリアルやね…「ホームレス」やとニュートラルな感じ?
これも言葉狩りの一部やったんやろか…
> リュカさん
読んでくれてありがとう。
デジライフ楽しんでね~
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