性の目覚め

性の目覚めのきっかけなど人それぞれであろうが、私は間違いなく幼少期に住んでいたキャバレーの近くにあった古い基盤が入ったままの画面焼けした筐体が並ぶ場末のゲームセンターの脱衣麻雀だ。他人の裸など銭湯でしか見る機会はなかったけどスタイルが良くてやたら艶めかしいポーズの大人の女の人達の裸に女子ながらもドキドキした。

そのゲーセンはヤンキーしかお客さんがいなかったので旧車やバイクへの目覚めの原因にもなったエポックメイキングスポットでもある。
父親が昼間バイトして夜はキャバレーの音響照明と働き詰めだったので私は日がな一日ヤンキーがやってる脱衣麻雀を眺めていた。すっかり麻雀も覚えて小学生になった頃にはヤンキー達とリアルで麻雀対戦してもコテンパンに打ち負かすレベルに達していた。
チビ相手にお金を賭けてやる訳でもないし私もそんな歳でお金が欲しい訳でもないからなにも気にしてなかったけど、ヤンキー達は示しがつかないと思っていたのか、いつもお菓子を買ってくれたりケンカを教えてくれたり、カーブの度にお尻が浮くほどハンドルが重たいスカイラインでドライブに連れて行ってくれたりした。
カウリングで前が見えないから常に体が45度ぐらい左右どちらかに傾いている背中の刺繍にはなんて書いてあるんだろうなどと三段シートに持たれてぼんやり眺めながら気持ち良く春の風に包まれて走ったりした日々がとても懐かしい。
もうその街にも訪れる事はないだろうけどいつも優しかった彼等もすっかりオジさんになってるんだろうか。
みんなから大人になったら成人式の振袖姿を見せてくれよと言われていたのに約束も果たせないままになってしまったけど。

なんの話だっけ。性の目覚めか。
特にオチはないので終わります。