趣味は読書、自嘲

五欲などという。
読書も欲望として、異常になることがある。
本を買うのは、購買欲と所有欲と知識欲が満たされるが、少しエスカレートすると、書店で拾い読みをして、活字の並びを見て、喜んだり、書店の匂いを嗅いで、恍惚としたり、あれこれ本を選んで結局一冊も買わずに一時間も二時間も書店で過ごし、それでも決して無駄とは思わず、ニタニタしたり、本を持って、ページを捲る感覚にさえ快感をおぼえたり。
少し筒井康隆のようになってしまった。
昔、北杜夫のエッセイで、トーマスマンに夢中になるあまり、街中で「トマトソース」の看板を見てドキッとするという記述があったが、分かる気もする。
異常になると、難解で決して意味など分からなかったのに、最後まで読んだら知的になったような錯覚に陥り、満足してしまうのである。
本など沢山読むより、余暇に運動したり、副業したり、異性と会ったりする方がよほど幸せかもしれない。