デジカフェはJavaScriptを使用しています。

JavaScriptを有効にすると、デジカフェをより快適にご利用できます。
ブラウザの設定でJavaScriptを有効にしてからご利用ください。

乙女座5

2007年04月27日 23:48

気持ちを少し落ち着かせるつもりで南京町の船員Barに入ってビールバーボンを頼んだ。

昔何度か来たことがあるが別に常連だったわけでもなく店主にも見覚えはない。

間口は狭く店内も狭いL字型のカウンターだけの店には黒人の大男とアジア系の若い船員らしき男が2人いるだけだった。着いたばかりの船から来たのだろう、3人とも薄汚れた格好をしている。

以前と同じで雰囲気はパッとしないが客に無関心なので楽に飲める

バーボンを一気に飲み干してからタバコに火をつけ最初の一服を胸深く吸い込みゆっくりと吐き出した……そうすることですこし気分が楽になった
人種の分からない白人バーテンが何か云ってきたがそれには答えずバーボンをもう一杯注文しビールと交互に飲みながら店内の空気に浸っていると国名の分からない何処かの外国にいるような気がしてくる。

この辺の路地には似たような船員バーが何軒もあり、時間に関係なく飲んでいる国籍不明者が多いので一人で飲んでいる日本人は珍しい。

2杯のバーボンと1本のビール、3本のタバコでようやく身体から力が抜け自然体になれた。

外に出て時計を見ると午後3時を少し過ぎたところだった。

 「10分ほどいただけか……さて……」小さく独り言を言い溜息をついてゆっくり歩き始める。

元町にある中古カメラ専門店を覗いてみる。初心者には覗きにくい雰囲気の店構えだ。ショウケースにはライカハッセルブラッドが高値で並んでいるが程度は怪しい。奥のガラスケースの上には中古品を分解したパーツが無造作に並べられ専門店雰囲気を出していた。一通り睨んで時間をつぶしてから店を出てハーバーランドへ向かってゆっくり歩いた。

神戸オリエンタルホテルロビーには既に奈緒美がソファーに腰を下ろして雑誌を見つめていた。
静かにそばに立っても彼女は気付かず一心に雑誌を見つめている。見ると二輪専門誌だ。

「早かったね」

俺が声を掛けるとほんの少し間をおいてから雑誌を閉じて足を組み替え

「どこに行くの……何か食べる……それとも……希望は……?」

俺は横に立ったまま彼女の全体を眺めていた

仕事用のスーツだろうがスカートはミニだ。ソファーに座って組んだ足が素晴らしく長い。カメラに納めるといい一枚になるなと考えていると

「サービスよ……声かけてくれたから」

そう言って微笑んだ。

俺は

「少し歩きたいんだ、その後ビーナスブリッジへ行こう……久し振りに街を眺めたくなった」

ここまで充分歩いたが今奈緒美の向かいのソファーに座るには視線のやり場に勇気がいる。

「いいわ」


ゆっくり歩く夕方のベイサイドは心地よく彼女は素敵だ。二輪を操縦している姿からは想像できない女性を感じさせる。ユーモアはあるが軽薄さは微塵も感じさせない、好きなことへの執着心……好奇心の強さはトップクラスだろう。

高い次元で二輪を乗りこなすため身体も鍛えている。薄っぺらなダイエットなど必要ない肉体を作り上げ、そのことを当然必要なことと苦もなく平然と受け入れ性差など全く考えず好きなことに没頭している姿はアスリートそのものだ。

なのに今日のようなシチエーションでは最高の女性を見せてくれる。自分の女性を十分知っていてそれを俺にプレゼントしてくれる。その思考が素敵だ。


車でビーナスブリッジへ行き黄昏の中色とりどりの灯りを増やしながら夕闇を迎える街を眺めている彼女を静かに抱き寄せ髪の香を感じながら街を眺めた。

西の地平線あたりにはまだ紺色が残っている

「駅まで送ってほしい」

「家まで送るわ」

「今日は駅でいいんだ」

「……OK」

彼女スポーツタイプの車に乗り込みエンジンをかけたが直ぐには発進せず何かを考えているようだ。インパネの照明に彼女が薄く照らされて一段と彫りの深まったシルエットが呼吸している。

「触れて…欲しい」
小さくはっきり彼女は言った

彼女の頬に指の背を当て優しく滑らせていった

「違うの……脚に…触れて欲しいの」

運転席に深く座った彼女スカートから伸びている一切無駄のない完璧な脚を見つめ手を滑らせていった。

頭をシートにあずけ目を閉じている、まるで陶器のようなシルエットはまさにビーナスでありエロスそのものを感じさせる。

彼女の脚に軽く唇で触れてから無言でそのシルエットを眺めていた。


沈黙の時間が流れていく


「送るわ……どこまで?」

シルエットがゆっくり頭を起こし前を見つめたまま静かに言った

左脚がクラッチペダル踏み込む

俺の右手はしなやかな筋肉が引き締まるのを感じた


「…………駅まで」

彼女は分からないほど小さな溜息をはくと爽やかに微笑んで言った

「OK」

俺はタバコに火をつけ深呼吸するように吸い込みゆっくりと吐き出してから窓を開けた。

ステアリングを通して操られる車の動きは流れるようにスムース

夜景は一段と鮮明になっていた

このデジログへのコメント

まだコメントがありません。最初のコメントを書いてみませんか?

コメントを書く

同じ趣味の友達を探そう♪

  • 新規会員登録(無料)

プロフィール

タイガードッグ

  • メールを送信する

タイガードッグさんの最近のデジログ

<2007年04月>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30