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津波によって息子の康生くんを失った遠藤さんのお話です。

2017年09月15日 23:08

震災のあった2011年の5月に

「康ちゃんに逢いたい、何で夢を見ないのだろう、夢でもいいから逢いたいなあ」

そう思った時、突然夢を見たそうです。みなし仮説に住んだことのない息子の康生くんが、仏壇代わりに作った祭壇の前の座布団に座って「イイーッ」と歯を見せて笑っていました。

昔から「ママ、笑って笑って」と言う子だった、と遠藤さん。夢の中の康生くんは鮮やかでカラーなのに無音で声が聞こえなかったそうです。悲しみのあまり遠藤さんは「康ちゃん、そんなのママ笑えないよ。笑えないってば、無理だよ」と話しかけていたといいます。この日は母の日だったそうです。

それから2年経ち、悲しみ暮れて悩む遠藤さんの思いが頂点に達した時にそれは起こりました。ご主人、中学生の娘さん、震災の翌年に生まれた次男と食事をしていました。康生くんの仏壇から少し離れた食卓であったため、仏壇のほうを振りむいて遠藤さんは「康ちゃん、こっちで食べようね」と声をかけたと言います。

そう言って全員で「いただきます」と言った途端、

「康ちゃんが大好きだったアンパンマンハンドルがついたおもちゃの車が、いきなり点滅したかと思うと、ブーンって音を立てて動いたんです」

スイッチを入れなければ動くはずのないおもちゃが動いた時に、全員が「あっ康ちゃんだ」と叫んだそうです。

ご主人が次男をお風呂に入れている時に遠藤さんはもう一度康生くんに心で話しかけました。

「康ちゃん、もう一回でいいからママおもちゃ動かして見せて」

するとまた動いたそうです。この日以来、遠藤さんは康生君を身近に感じるようになったと言います。

お盆のある日、次男と離れて寝ているはずの自分の布団に、気付いたら次男が寝ていたことがあったそうです。ご主人に聞いてみると、夜に次男が起きて誰かに手を引かれるようにして歩いて遠藤さんの布団に入ったと言います。またある時は次男が夜中にむくっと起き出し「ブランコブランコブランコで遊ぼう」と言って遊び始めたといいます。

2歳の次男をブランコで遊ばせたことはなく、ブランコという言葉も知らないはずでした。これは康ちゃんの仕業だなと思ったと言います。しかしそんな事もお盆を過ぎるとなくなっていったそうです。

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