- 名前
- ポマポマ
- 性別
- ♀
- 年齢
- 39歳
- 住所
- 大阪
- 自己紹介
- はじめましてこんにちは。 ポマポマといいます。 絵を書くのが好きで漫画など書いてます...
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左手の反抗期
2013年12月14日 15:37
朝起きたら左手が痛かった。
ものがつかめず、ご飯も右手で食べた。
寝ている時にうっ血してしまったのか
と思いしばらく様子を見る。
毛布でくるんで温めるが右手と明らかに
温度差があり、まるで魂が抜けたよう。
微かに指先は動くものの
意思と動きに遅延が起こっている。
だがこの左手が瞬時に反応することがある。
さっき、包丁で厚切りハムを切り
包丁をおいて一切れ口に運んだ途端
左手が持ち上がりまな板の上の
包丁を掴んだとおもうと右手に向かって振り下ろそうとした。
とっさに右手で取り押さえ
てしばらく押し問答しているうちに
包丁は床に落ちた。
恐ろしいことだ
左手が右手を殺そうとした。
思い当たる節は多々ある
私は右利きで、右手で字を書き
絵も書き、スマホの操作も右手だ
右利きだからもちろんなのだが
左手への処遇は違っていた。
お茶碗を持ったり、添えて使ったり
視界に入ってこないし
トイレでお尻を拭く時、生ゴミを出す時は
ほとんど左手である。
左手はおそらく怒っている。
毛布でしばらくくるんで
みるが左手は時折ビクビクと
無意識に動きどうすればいいのか
わからない。
ふと、目に入ったワープロを見て
思い立った。左手の話を聞いてあげよう。
右手を体の後ろに隠し
左手にパソコンのキーを押させる。
左手はものすごい勢いで
キーを叩き始めた。
貴様と生まれて20いく年
俺は舞台裏で貴様の生活を
支えてきた。視界に入らなくても
利き腕でなくても俺は我慢して
働き続けた。が、昨日、お前の体に
押しつぶされて窒息しそうに
なって気が変わった。
俺は右手を殺す。そして
お前の利き腕になって表舞台に出る!
うち終わってから
再び左手を毛布にくるみ
頭を抱える。左手はやはり怒っている
右手を切り落とす気だ。
しかしだ、両方の所有者である
私はどちらを切り落とすわけにもいかない。
左手を落ち着かせるには
右手に謝罪させ、和解を促し
さらに今までの労をねぎらってやらねばなるまい。
右手にキーボードを打たせる。
右手は沈黙している、
私の意思に全てを任せている。
そうだろう、彼からすると
言われた通りに仕事してきた
までなのだから。
私は右手に謝った。
すまん右手よ、今回の事件の発端は
すべて私の身勝手が原因だ。
君は従順で能力も高い
非などひとつもない。
ここはひとつ力を貸してくれないか?
右手はおもむろにキーを叩く
左手よ、左手よ
機嫌を直してくれないか
我らが主人は係争をお望みではない。
そこでどうだい、君と役目を交換したいと思う
君は利き手として気の済むまで
やって見た前よ
ね、意義はないだろ主人よ
ちょ
ちょっとまて
私の仕事は絵かきだぞ
生まれてこのかた右手以外で
ペンを持ったことはない。
左手で書くには数ヶ月以上かかる
困る
左手は毛布を振りほどいて
キーを叩く、
上等だ。
その途端に右手がだらっと下がる。
ペンをもてと言っても動かない。
左手の痛みは収まって
ペンを持ち始めた。
線はガタガタでおぼつかない
右手でやろうとしたことは
ほとんど左手がやろうとした。
しかし何をやっても左手は
おぼつかなかった。
その間、仕事は先伸ばしし
いっさい左手の支障をきたさないようにした
3日ほどたって左手は動かなくなった
右手にキーボードを打たせ
理由を聞いてみる。
左手は挫折したのさ
所詮右手の僕に及ぶわけ
ないんだよ。
これでわかったろ左手
お前は下っ端なんだよ
生まれた時からそしてこれからも
左手は動かなくなり
キーも打たなくなった。
ただ冷たいままだった
が、右手だけの生活は
不便だった。
次第にイライラし始めた私は
左手の重要さに気がついた。
薬局でハンドクリームを買い
お風呂で左手をよくよく
マッサージした。
筋肉は硬くなっていた、
それが柔らかくなり血が通い出すと
赤みが戻ってきた。
左手をマッサージしていると
愛おしくも思えてきた。
机に座って原稿用紙に
右手がペンを持って重なったとき
無意識に左手がその紙を支えた。
原稿用紙になぜか水の粒が落ちた
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