さて私は誰でしょう。

姪の姪子ちゃんはカメラを向けるとおそろしい勢いでこっちに向かって来る。

だけどカメラが好き、というわけでは無さそうだ。
ものすごい笑顔でこっちに来るとカメラのボタンを所構わずぎゅうぎゅう押す。

...どうもカメラの概念はいまいち理解してない御様子。
おそらくだけどカラスと一緒でレンズがキラキラしてるから寄ってくるんじゃないかな。

しかしこうも近くに来ると撮影どころじゃないな。
近すぎて最小焦点距離は振り切れてる。

それといろんなボタンを押し過ぎてもいろいろ参る。
ちょ、それライブビューだって！連打するなって！

興をそらせようと液晶画面を示しながらレンズを妹に向けてみる。
ここに写ってるのだあれ？
「ママ！」
じゃあこれは？「じじ！」これは？「ばば！」

この遊びはそこそこ気に入ってもらえたようでボタン連打の手の動きは止まる。ほ。

そうやっていろんな所にレンズを向けていると、今度は妹がオレを指差して姪子ちゃんに尋ねる。

「じゃあこの人だあれだ？」

姪子ちゃんは小首をかしげてしばし考え込む。
「....わかんない！」

ちょっとびっくりした。
いや、あんまオレ自分の事を名乗った事は無かったから知らないのは当然だけど「わかんない」という概念はもう姪子ちゃんにはあるのね。

...それからお前は「良く分からない人」なのに膝の上に乗ったり、その人のメガネを取り上げたり、一緒にブロックで遊んだりするのか。

いろいろ恐ろしいヤツだな。

とか油断してたら今度は姪子ちゃんにシャッターボタンを連打される。
ああああ、それはダメだって！