すべての原因は…　(2)

ツクツクホーシとセミが鳴いていた。

公園には、たくさんのミンミンゼミの死がいが落ちていた。
1週間の命、本当に短いと思う。

セミは何を考え、死んでいったのか？
たぶん、考える暇もなく、子孫を残すことだけに、必死だったのだと思う。


人間は、セミのように命が短くないから、いろいろ考え、決断し、生きていく。

どう生きていくかは、自由だ。
でも、損をする生き方というものがあるのも事実だ。



(前回の続き)

駅前で、隣のアパートに住んでいる人と会い、一緒に帰った。


2人で駅の近くの駐輪場に行った。
その人は、入口のすぐ近くに止めていたので、すぐに自転車を引き出し、道に出た。
俺は、「鍵はしてないんですか？」
と訊いた。

「こんな自転車盗む奴いないし。鍵は壊れてるから、かけられないんだよ」
とその人は答えた。

駅前だから、どんなボロ自転車でも、盗む人はいると思うが…。
実際に盗まれていないのだから、その人が正しいのか…。

俺は、駐輪場の少し奥に止めていた。
自転車に乗って、駐輪場を出て、

2人で一緒に帰った。

自転車で走っていると、

シュゴー、ガタン、
シュゴー、ボコン、

と聞こえる。
何の音だろうと思った。

その人の自転車を見たら、後輪がパンクしていた。
でも、普通に乗っている。
パンクなんかしていないような感じで。

俺は、気づいてないのかなあ、と思いつつ、
「後輪は、パンクしてませんか？」
と言った。

その人は、答えた。
「うん。パンクしてる。前もだよ。」

え？？？
前もパンクしているのか？

前輪もパンクしていた。

「もう、半年前ぐらいから、パンクしてるんだ」

え？？？
半年前から？

俺は、訊いた。
「直さないんですか？」

その人は答えた。
「乗れるからいいかな、と思って」

理解不能だ。。。

確かに、価値観が違うのか？？？
価値観という問題か？？？


そうか、前と後ろのタイヤがパンクしているから、盗まれないのか…。
と、妙な納得をしてしまった。


この人は、普通にパンクした自転車に乗っている。
うーん、どうなんだ？

そして、自転車に乗りながら普通に話している。

「最近、入金が遅くて大変なんだよ」
「曲を納入したのに、お金がなかなかはいらないんだよ」

リーマンショック(去年の10月)以降、ゲーム会社からの入金が遅いので、生活が苦しい、と言っていた。

ゲーム音楽を作っているミュージシャンは、思いっきり影響を受けたらしい。

「今、夜間の清掃のアルバイトをしているんだよ」

ゲーム音楽の作曲だけでは食べていけないので、夜間の清掃アルバイトをしているそうだ。

「俺は、音楽で食べていく、と決めたから、アルバイトはするけど、他の職を探すつもりはない」

と言っていた。

夜間のアルバイトのある日は、夜3時頃、家に帰ってくるそうだ。

「やっぱりさあ、ミュージシャンやってると、公務員とかに嫌われるんだよね。特に、警察みたいな堅い人たちは、俺達が理解できないらしいんだよ。金髪だっていいだろ、て言うの。いちいち、職務質問されるとウザいんだよね」

いつものパターンだ。

ミュージシャンは、自由人で、
公務員は、型にはまった人間。

君がどういうポリシーで生きていくかは、自由だ。

でも、一つだけ言わしてくれ。
君が警官から職務質問を受けるのは、金髪だからではない。

夜中の3時に、前と後ろのタイヤがパンクして、鍵が壊れている自転車に

シュゴー、ガタン、
シュゴー、ボコン、

と音をたてて、乗っていたら、
金髪でなくても、職務質問される。。。


原因は、君にあるのだ。警官ではない。


同棲している彼女も、さすがに、この自転車に乗っていたら、別れるのを考えてしまうのもわかる。

さらに、問題はこれだけではない。

彼女は公務員で堅い人間だ、と言っているが、
別にそうは思わない。

2年間同棲していて、10回もエッチしていないのは、君に問題がある。

自転車だけではない。
君には、ほかにも問題があるのだ。

公務員ではない、普通のOLでも、君とエッチをするのは、考えてしまうのではないか？？？



俺は、ミュージシャンだから、価値観が違う。
俺は、自由人だから、普通の人とは違う。

今の時代は、なんでもある。
価値観も多様化している。

原宿では、ファッションとしてスカートをはいている男性がいる。

俺の価値観は普通の人と違うと、主張することに意味があるのか？

たぶん、ない。。。

その前に、
普通の人とは、どんな人？という話になってしまう。

なんとなく、この人の主張は古い気がする。
昭和の時代のような気がする。

この人は、25歳だが…。


(長くなってしまったので、続きは次回に書きます)